Friday, May 24, 2019

勝手に事業部通信 Vol.11 (5/24/19)

You are not the code you write.
(あなたが書いたコードへの批判は、あなた自身への批判ではない。)
ー プログラマーの格言

先日、ラインマネージャー研修で3時間ほどの講義と簡単なワークショップに参加してきました。
"Positive Leadership Edge"というコースで、リーダーシップ自体はコア・コンピテンシーの1つだと思うのですが、リーダーシップを具体的なアクションに落とし込む上で必要とされる指針やマインドセット、コミュニケーションにおいて意識すべき基本的なポイントなどをざっと流していくもので、率直な感想としては、比較的面白い研修でした。

この3時間のコンテンツの中で、色々なキーワードが紹介されていたのですが、その中に"5 Positive, 1 Negative"というのがあったんです。要するに、組織運営においては時に厳しいメッセージも必要であり、5:1程度のバランスでネガティブにも触れるのがリーダーシップの要諦だということですね。この研修に参加されていた複数のラインの方が「このように分かりやすく『理想のメッセージ比率』をガイドされたことはなく、非常に参考になった」といったコメントをされていました。

でも、私としては、心に多少の引っ掛かりがあるんです。
というのも、この言葉を聞いた直後の1st Impressionが頭から離れないんですよね。
"1 Negative"って、本当に必要なのか。別に"Full Positive"でいいんじゃないかなと。

人はそれぞれバックグラウンドも価値観も違うので、チームで仕事をしていれば様々なギャップが生じるもので、それ自体は自然なことだと思います。そして、単純に依拠する価値観の違いによって生じるギャップで、それ自体に優劣など存在しないといった類のものもあれば、スキルや経験の蓄積によって生じるギャップで、ある程度まで補正するのが正しいケースもあると思います。

例えば、私が大学ラグビー部のコーチをする時に、選手たち自身の胸の内に、チャレンジしてみたい戦略や戦術なんかがある程度まで浮かんでいるとします。やってみたいという思い自体を「正しいか、否か」という視点で批評することなどできないので、私が語りかける言葉は「うん、やってみようか」しかありません。プレーするのは、選手たち自身ですから。でも、やりたいことに対して、実際にやっていることや、あるいは選手が取っているアプローチが明らかに乖離してしまっていると感じれば、修正をかけていく。明らかに間違ったプレーというのも、確かに存在しますからね。

ただ、これを"Negative"にする必要はあるのでしょうか。
ライン/非ラインなど関係なく、仕事をしていて生じるギャップへの向き合い方として、あるいはチーム・ビルディングというプロセスにおいて、ネガティブを全部まとめてポジティブに変換できないものでしょうか。子どもにオセロを教える時に、取られてしまった黒石のことではなく、どこに白石を置いてあげれば色が反転するかを伝えるのと同じように。

いつもラグビーの話になってしまって、自分の抽斗の少なさに我ながら呆れてしまうのですが、ラグビーのコーチングにおいては、ボールをよく落とす特定の選手に対して「落とすな」とも「ボールを落としすぎだ」とも言いません。少なくとも、私は言わないようにしています。理由は単純で、本人が一番分かっているからです。(チーム全体に対しては、ムードを引き締めるために伝えることはあります。)
そうではなくて、「ハンズアップして構えておくと、キャッチ率が上がるよ」に変えていく。あるいは「ランニングはいいから、あれが取れるようになると相手には脅威だね」にしていくんです。
私の中では勝手に「可能性トーク」と命名しているのですが、要するに「今、目の前にある課題」をそのまま語るのではなく、「それがちょっとでもプラスに改善した時に見えてくるはずの明日」を語るようにしたいなと。まあ、こんなふうに書いておきながら、実際の自分はそうやって生きられない瞬間の連続だったりもして、いつになったら人として成熟できるのかなあと途方に暮れる毎日ですけど。

チームで活動していて、お互いが本気になれば、厳しい指摘が飛んできたり、時に激しいぶつかり合いになったりというのも普通のことです。馴れ合いで仕事するのはプロフェッショナルではないと思います。でも、一通り厳しさと本音の衝突があった次の瞬間に、オセロの黒石を反転させるような言葉が自然と続いていくような組織の方が、やっぱりいいんじゃないかなという気がします。なにより、その方が心地よいですしね。

大型連休で溜まっていた業務の波が押し寄せてきて、誰もが疲労を溜め込んでいる頃かなと思いますが、週末はゆっくりリフレッシュして、この1週間に生じたあらゆるコミュニケーションを振り返りながら、本当は打てたかもしれない「起死回生の一手」を探してみるのも面白いかな、なんて個人的には考えています。良い一手には、たった1つの石だけで盤面を埋めていた黒石を一気に白くしてしまうパワーがある訳ですから。

残念ながら、オセロの名手には到底なれませんけど。