Sunday, October 20, 2013

アタックの生命線

学習院大とのゲームには、本当に多くのポイントが詰まっているのだけれど、もう1つだけ書いてみたい。今年のチームが標榜する"Attack"について。

前半9分40秒頃。ハーフウェイライン左サイドのマイボールLO。1次攻撃で7番を使ってグラウンド中央でラックにすると、そのまま順目に展開。12番が綺麗なタイミングで放った柔らかいパスがFBに渡ると、20m近くのビッグゲインとなって、右サイドライン際で再度ラックフェーズ。ここで、ラックからボールを捌こうとしたSHに対して、ライン際のショートサイドにいた相手の4番が飛び出してきて、パスモーションに入ったSHを浴びせ倒す。結果的にはオフサイドだったので、チームはタッチに蹴り出して、敵陣ゴール前でマイボールLOのチャンスを得た。

このシーンは、おそらくチームで総括されていないのではないだろうか。このシーンを繰り返しチェックした部員は、何人いるだろう。マイボールのPKを得たのだから、まずはOK。その後のラインアウトの方が重要。そして結果的に、ここからの一連でチームはトライを挙げたのだから、基本的にはナイスアタック。そう感じている選手も少なくないのかな、という気がしている。

でも、考えてみる価値はあるんじゃないか。
仮に今、一部で戦う青学大や成蹊大と戦っていたとして、20mを越えるロングゲインを許した直後のラックで、自分たちはオフサイドできるだろうか、って。

あの時、ライン際からオフサイドで飛び出してきたのは、相手の4番だ。彼は最初のLOではフローターで、順目を押さえやすかったのは事実だけれど、突進するこちらのFBを必死に追いかけて、そのまま20m後方のラックサイドにポジショニングした。一方で、このラックで仕事をした味方のフォワードは何人いただろうか。ゼロだ。1人もいない。20m以上ラインが押し上がっているのに、そのラックに誰も到達していないんだ。こちらの両LOは、どこにいただろうか。1次フェーズで突っ込んだ7番はともかく、6番はどこにいるんだ。1次のラックは、ほとんどスイーパー不要でクリーンに捌けているはずなのに。SHの到達も、遅い。このフェーズを活かすのが今年のチームの命綱だと思っているならば、相手のオフサイドなど関係なく捌くべきボールだ。ラックからボールがこぼれ出た瞬間に、ダイブでも何でも構わないから、絶対にパスアウトしてほしい。いや、しないといけない。そういうフェーズだったはずなんだ。

もちろん、SHだけを責められない。相手の4番がオフサイドできた理由を考える必要がある。これも、俺の中でははっきりしている。20m以上ゲインした直後でさえ、ラックを前で組めていないために、オフサイドラインが下がらないんだ。ラックの最後尾が、まったく動かない。だから学習院大は、ピンチの局面においても、きちんとスタートを切れる。時にそれがオフサイドであっても。

残されたゲームは、あと3つ。
誰もが今年の”Attack”を体現したいと思っているはずだ。でも、その時に生命線となるのはきっと、SOのパスでもなければ、サインの精度や選択でもない。

ブレイクダウン。特にラックへの反応力と集中力。
いや、もっと単純でいい。まずは、誰よりも早くラックに到達すること。
ただこれだけを考えればいいと、俺は思います。

「小さな瞬間」に全力を

再び対抗戦のことを。
もう1ヶ月前のゲームなのだけれど、学習院大との開幕戦をチェックしてみた。
次のゲームが一橋大ということを考えると、最も参考にしやすいのかなと。
そうしたら、色々と見えてきた。

今シーズンのチーム目標を考えると、絶対に負けられないという決意を胸に臨んだ開幕戦だったのだと思うけれど、ファイナルスコアは20-26。前半を20-21の僅差で折り返すも、後半3分に追加点を許してしまい、そのまま逃げ切られてしまった。このゲームは、選手たちの中でどのように総括され、そして今、この惜敗から何を得ようとしているのかなあ。もしかすると、先日の明学戦以上に、今、見返した方がいいゲームなのかもしれないと、俺は思うのだけれど。

ゲーム全体をみれば、前半7分に失ったトライがターニングポイントだったかもしれない。自陣10mよりやや後方、左サイドの相手ボールLO。相手スローが乱れた後のこぼれ球を確保して展開すると、グラウンド中央あたりでラック。これをSHがクイックにパスアウトすると、SOから右オープンにキックする。でも、このボールをカウンターされて、最後は相手WTBがライン際で上げたショートパントの処理をミスしてそのまま拾われ、ポール下まで運ばれてトライとなった。

キック処理のミスは、結果論。惜しまれるけれど、どうでもいい。
それよりも、チームで意見交換はされたのかなあ。

あのトライがポール下でなければ、前半が20-19だったかもしれないことについて。

相手のWTBが突進したのは、左のライン際。ショートパントの落下地点も、こぼれ球を拾った場所も、もちろんライン際。でも彼は、やすやすと正面にトライした。
理由もはっきりしている。こちらのSOが蹴ったボールを受けた相手ランナーが1次ディフェンスを切った時点で劣勢のフェーズになることが分かっていながら、誰1人として、「次に埋めるべきスペース」へとコースを切り替えていなかったからだ。いや、コースだけじゃない。そもそも、誰1人として「全力で」追いかけていなかった。最後にポール下まで戻ってきた左WTBに、正面でトライさせないという意地は、全く見られなかったけれど、それだけじゃない。そのはるか前に、1次防御を切られた瞬間のチームの反応力で、既に勝負はついていた。
絶対に負けられないゲームの、前半7分に。

今、俺はコーチでも何でもないけれど、チームのことは好きだから、悔しくてたまらない。明学戦をみて感じたショックと同じものが、あの瞬間にも既にあったんだ。そのことが惜しまれてならない。あの場面でトップギアが入らないというのは、誰よりも選手自身が、自分達の可能性を信じ切れていないということになってしまうのだから。

正面にトライさせなかったとしても、ゴールは入っていたかもしれない。20-19で迎えても、結果がどうだったかは分からない。でも俺は、もう勝手に確信している。あの瞬間に「本当のベスト」を尽くせるようになるだけで、そういう「小さな瞬間」に本気でこだわっていくだけで、チームは劇的に強くなるということを。

明学戦 #2

昨日チェックした対抗戦のことが、まだ気になっている。
いまやコーチでも何でもない、ただのOBの戯言になってしまうけれど。

キックオフ直後の前半1分。
相手のオフサイドで得たPKをタッチに蹴り出して、敵陣左ゴール前ラインアウト。やや後方でマイボールをキャッチすると、モールを組んだ次の瞬間、ショートサイドに控えたNo.8にパスをして突破を図るサインプレー。彼が力強く相手ディフェンダーにヒットすると、更に左サイドにFWが持ち出して、いきなりの先制トライになった。

これも率直に書いてしまうと、この一連をビデオで見て最初に感じたのは、実はとても強い疑問符だった。サインプレーの選択に、という訳ではない。サインプレーでNo.8が仕掛けることが分かっていながら、彼へのサポートがあまりに遅かったからだ。そして、最終的にトライになったピック&ゴーのタイミングが、自分の理想よりも1テンポ遅かったからだ。

今日は、チームはオフかなあ。ミーティングは、明日だろうか。
このプレーは、今シーズンのチームにとって、どのように総括されていくのだろうか。
No.8の彼は力強いヒット、そしてドライブを見せていた。これは、個人プレー。でもここに、彼が対面にヒットした瞬間、後方からトップギアで肩をぶち込んで、彼の身体もろとも押し込むロックがいると、ユニットプレーになる。スロワーとしてライン際に残っていたフッカーが、彼と相手ディフェンダーとの接点が生まれる場所を見極めて、ヒットの次の瞬間、相手がもう密集の左サイドからは頭をねじ込めないほどタイトなサポートを見せてくれると、初めてサインプレーになる。
そして、この3人が「チームの約束」をきっちりと果たしてくれることを信じて、既にボールアウトされたモールからFWが一斉にブレイクして、このラックに命をかけてくれた時に、この一連は本物のチームプレーになる。

強い個人を核にしたチームプレーはきっと、もう1つ上のレベルの相手であってもゲインラインを切ってくれるはずだ。でも、そのもうちょっと先も、きっとあって。それが、最後のピック。あれがもう1テンポ早かったならば、もう1つ上のレベルの相手からも「トライ」を狙えるんじゃないかなあ。ボールの白い腹がラックの最後尾に顔をのぞかせた次の瞬間、そこからもう消え去っているようなそんなタイミングで、ピックしてほしいんだ。この時、今度は「チームプレーによって個が活かされる」というもう1つ別のループが、グラウンドに生まれるんじゃないかなあ。

完全に妄想のようなものかもしれないけれど、チームの中でそんな会話がされていたら、俺としてはとてもうれしい。そして、「でもそのピックって、常にグラウンドのボールを最速で拾う意識ですべてのメニューをこなしてないと、たぶん出来ないよなあ」なんて台詞がロッカールームに転がっていたら、もっとうれしい。

明学戦 #1

ビデオでチェックした対抗戦のことを。
前半終了時のスコアは、8-31。
ハーフタイムの時点で、このスコアはどう受け止められていたのかなあ。

後半3分。自陣右サイドのLOモールからSHが上げたハイパントは、FWが最もラッシュしやすいはずの場所にまっすぐ落ちたのだけれど、チェイサーが入れ違いになってしまい、カウンターを受けてしまう。するすると相手の11番にDFを切られるも、インゴール直前でカバーディフェンスが何とか引っ掛かり、相手のノックオンでなんとか救われて。

でも俺は、本当のことを言うと、ちょっとショックだった。
キックチェースのディフェンスが整備されていなかったことに、ではない。ゴールラインに向かって突進する相手ランナーの背中を追って、本気で戻ろうとする仲間がほとんど誰もいなかったことに。カバーに走ったバックスがきっとトライライン目前で止めてくれると信じて、そこで出来るはずのポイントサイドを誰よりも早くカバーしようとスタートダッシュを切っていたフォワードが誰もいなかったことに。8-31で迎えた後半3分に

あの瞬間、誰よりも必死に自陣トライライン目前で出来るはずのラックを信じて、そこにカウンターラックを仕掛けようとするロックを見たい。相手SHがポイントに到達する前に、もう順目で地面に手をついてスタートの構えを取っているフランカーを見たい。そういうやつらがいることを知っているからこそ、全く逆サイドからでも死ぬ気で走ってくるオープンWTBを見たい。
勝ちたい心というのはきっと、そういうことだと思うんです。

いいプレーもたくさんあって。決して落ち込んでばかりいる必要もなくて。
でも、相手だって勝ちたいのは同じだから。
残りの試合で、目の色を変えて走リ出すヤツがきっと、このチームをもっと成長させてくれるのだと思います。ゲームに出られないメンバーも、マネージャーやトレーナーも、きっとそんな姿を見たいはずなんです。