Monday, February 27, 2012

『ピュリツァー賞 受賞写真 全記録』

ハル・ビュエル 『ピュリツァー賞 受賞写真 全記録』

実は、横浜に引っ越して最初に買った本。
ピュリツァー賞を受賞した歴代の報道写真が網羅されている。

昔から写真に対する興味があった訳ではないのだけれど、数年前にTV東京『美の巨人たち』でアンリ・カルティエ・ブレッソンの写真を見て以来、写真がすごく好きになった。それからは、ブレッソンの写真集は勿論のこと、他にも幾つかの写真集を買うようになって。

そんな訳で、本作。
報道写真なので、やはり重いです。ピュリツァー賞を取るような写真というのは、社会の断層や非業なる現実、政治の闇、あるいは人間の暗部といったものを切り取ったようなもので、正直に言って正視に堪えないシビアな写真も多い。
それが現実だと、目を逸らすなよと言われればその通りなのだけれど、報道写真というものの難しさをどうしても感じてしまう。ピュリツァー賞を受賞した報道写真家達は、ジャーナリストとして素晴らしい仕事をしたのだと思うけれど・・・。
『プロヴォーク』の写真家達は、「アレ・ブレ・ボケ」といったのだけれど、個人的には、特に近年の受賞作ほど、あまりにクリアすぎるような気がしないでもない。写真は時間を切り取るものだけれど、あまりにも切り取られすぎている感じがするんだよね。止まり過ぎているような。こういう写真が撮られた時に、ファインダーの前にあった現実は、もっとアレていて、ブレていたんじゃないかというのが、個人的な想像だ。
まあ、ド素人の想像だけどね。

『フラジャイルな闘い 日本の行方(連塾 方法日本)』

 松岡正剛著『フラジャイルな闘い 日本の行方 (連塾 方法日本)』

ようやく読了。ここ1週間近く格闘していた。
いやもう物凄い本です。松岡正剛と佐藤優は、現代日本を代表する知の巨人だね。
本書は、その松岡正剛が講じた「連塾」の第7講と第8講(最終回)。
「日本という方法(方法日本)」という言葉で、日本というものの光と影、表と裏、歴史と今、オリジナリティと普遍性、そういったものを松岡正剛流に紐解いていくのだけれど、その発散のレベルがあまりに凄まじくて、前半(第7講)を読むだけでノックダウンされそうになる。
感想なんて迂闊に書けない、といった類の1冊です。
本書の頁を手繰ってしまうと、読みたい本、聴きたい曲、観たいDVDといったものが相当に増えてしまうのは、もう間違いない。とりあえず俺は、小林正樹によるドキュメンタリー映画『東京裁判』のDVDと、ジャズピアニスト秋吉敏子さんの『孤軍』を買ってしまった。

ちなみに、松岡正剛さんの著作を読んだことがなければ、『17歳のための世界と日本の見方』(春秋社)をまず読んでみるのがお勧めです。これはもう完全に面白いので。

Tuesday, February 21, 2012

紙を折る

大切な会議がある。
その難しい舵取りを、今のチームにおけるリーダーの先輩達が担おうとしている。

俺は、陪席。発言権はない。
でも仮に権利があったとして、場を動かす言葉を発することができるだろうかと自分の胸に問いかけると、率直に言えば、今、それだけの能力はきっとない。

25人が参加する明日のために、1人で資料を刷っていく。
A3とA4が順不同に混在しているのを、1つずつ並べて、A3の用紙を折りたたみ、クリップで順番に留めていく。
紙を折っていると、どこか気持ちが整理されていくような感じもする。晩ご飯で使った食器を洗っている時の感覚に近いのかもしれない。ちょっとずつ何かが片付いて、正しいところに収まっていくような、そんな感じだ。とにかく、ほんの小さなことが資料の印象を壊してしまわないように、1セットずつ、いつもより心持ち丁寧に折っていく。なるべく角が揃うように。
あとは、ただ明日を待つばかり。

それが、今の自分の実力です。

明日の展開は読み切れないけれど、この資料に託されたものがきちんと伝わってくれれば、それこそが最高の成果だと思う。
そして、きっとそうなる。責任者として最前線に立たれる先輩達の本気と誠意をもってすれば、間違いなく思いは届くはずだ。そして、そういうリーダーがこのチームにはいるのだから、今の状況が多少苦しかったとしても、本当に良いチームだということに変わりはない。そう、恵まれている。

いつか恩返しをしないといけない。
いつか、なんて悠長なことではないのかもしれないけれど。

シナリオこそ書かなければ。
紙に図表を書くだけではなくて。
時には正論から折れる決断力を。
でもそれは、明日の紙を折った時のように繊細に。
そして、表現されない部分への想像力を。
目先のことだけに視野を奪われるのではなくて。

なんて、小さな決意表明です。