Tuesday, December 27, 2011

メンタリティの綾

ようやく大学選手権2回戦のチェックが完了。
帝京大vs同志社大を観ていないのは、結果を知った今となっては残念だけれど、残り3試合も全て見応えのあるゲームだった。大学ラグビーには、やはり独特の魅力があるね。
筑波大、天理大がいわゆる「伝統校」を破って準決勝に駒を進めた訳だけれど、どちらのチームも「勝てるかも」という雰囲気は全くなかった。グラウンド上にあったのは、「伝統への挑戦」みたいな淡いものではなくて、ただもう「勝つ」という明確な意志だった。
その意味では、ゲームセットの笛が鳴った瞬間の筑波大メンバーの歓喜は印象的だった。創部初の国立がかかったゲームが、重くないはずがない。それでも、キックオフの笛が鳴ってしまえば、もう眼の前の相手とボールが全て。80分間の死闘を終えて、重みから解放された瞬間に喜びが弾けた姿を見ていて、彼らはとても成熟したメンタリティを持って闘っていたのだろうなあと感じた。

ゲームとして最も揺れ動いたのは、早稲田大vs関東学院大だ。
どちらに転んでもおかしくないゲームだった。
関東学院大は、リーグ戦での東海大への惜敗を見て、選手権では化けると思っていたのだけれど、まさに荒馬の本領が出てきた感じがする。いまや伝統になってきた感のあるFW勢の大きなストライドでの突進は、他のチームには意外と見られない魅力だ。大学ラグビーのシャローディフェンスはやや飛び込み気味のタックルも多いので、膝を高く振り上げたワイルドなランニングは、比較的有効なスタイルかもしれない。やや不用意なミスと反則が多いのは気になるけれど、天理大は比較的闘いやすい相手になるだろう。準決勝までの約1週間でも、まだ成長してきそうで楽しみだ。

早稲田大は、惜しまれる敗戦となってしまった。
discipline(規律)のしっかりした非常に良いチームだったと思う。キックに対する戻りの早さ、ラッシュすべきポイントへの反応などは抜群で、本当に良く鍛えられているなあと感じた。
ただ、個人的にちょっと気になったプレーが2つあって。
1つは、後半早々に敵陣での連続攻撃からSOの小倉選手がDGを狙ったこと。
正直な印象としては、意図が分からなかった。関東としては、仮にDGが入っていたとしてもむしろ結束したんじゃないかなあ。「やつらは、俺たちのディフェンスを崩せない」って。
早稲田大の今シーズンの最大の価値は、「スコアまでの射程距離」だったと思うんだ。時間帯とエリアを問わず、隙さえあれば一瞬でトライラインまで持っていく迫力。少なくとも、その雰囲気を常に漂わせているライン。それは、帝京大にもない早稲田のオリジナリティだったと思うのだけれど、あの場面でのDGという選択は、ほんの少しだけ、その雰囲気に曇りをかけてしまったかもしれない。
もう1つは、関東学院大がゴール前のドライビングモールからBKに展開して奪った2本目のトライの際に、早稲田大のラインディフェンスがアップしなかったこと。相手の展開に合わせてディフェンスコースを取っていく選択をして、そのまま外を走り切られてしまった。
あれも、ちょっと意外だった。早稲田こそ、あの場面はシャローしてくると思っていた。
早稲田大は、ルースフェーズでは全般的によく出てディフェンスしていて、相手SHがボールに触れた瞬間の出足は大学トップクラスだと思う。まさにdisciplineの世界だ。つまり、能力としてシャローできないチームじゃない。そこが非常に考えさせられるポイントで、あの場面で、早稲田大のラインディフェンスは、能力以外の要素で足が止まったのだと思うんだ。
結局のところ、それって何だったのだろう。グラウンドに立っていたメンバーの心の中にしか答えはないのかもしれないけれど、そういったとても小さな綾が、スコアを決めていく。
シャローしたら止められたかどうか、それは分からない。
こういのは、どこまで行っても結果論でしかないと思っている。
でも、ゲームの流れを支配する両チームのメンタリティのせめぎ合いの中で、それはワンプレー以上の意味を持っていたのかもしれないと思ったりもする。特にノックアウト・ラウンドの大学選手権においては、そういう側面は強いのかもしれない。
(出場したことがないので、想像でしかないけれど。)

でも、それでもやはり、早稲田大はとても良いチームだった。
それは、間違いないと思います。

Monday, December 26, 2011

2D:4D比


ちょっと気休めのトピックを。
名著『競争と公平感』で有名な大竹文雄さんのblogによると、人差し指と薬指の長さの比率(2D:4D比)と大相撲力士の昇進との相関についての研究があるそうだ。
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/142212/126445/70979511

パートナーによると有名な話のようだけれど、なかなか興味深い研究だ。
要するに、相対的に薬指が長い人ほどパフォーマンスが高い傾向がみられる、ということなのだけれど、一見してスポーツ能力とは何の相関もないように思える2D:4D比に着眼して、統計的に有意な傾向を導出するというのは、やはりアクロバティックで面白い。2D:4D比の差異に影響を与えているというテストステロンは、筋肉増大作用を持つ男性ホルモンなので、そこからスポーツ能力全般との相関へと研究が展開されていったのかもしれないけれど、胎児期のテストステロン曝露量が生後のスポーツ能力にある程度まで影響してしまうというのも、人体の神秘であり、また奥深さということなのだろうか。(胎児期のテストステロン曝露量というのは、どのような要因で決まってくるのだろうか。それが見えてくると、妊婦の過ごし方も変わってくるのかもしれない。)

ちなみに、自分自身の2D:4D比は見ての通りです。
パートナーの評価としては、「男性の割には、薬指が短いね」とのこと。
ラグビーが上手くない理由の1つかもしれません。

Monday, December 05, 2011

早明戦

さて、昨日の早明戦。
終始スコアで先行される苦しい展開の中、土壇場で勝利をさらったのは早稲田だった。
結果的にゲームを決めることになった明治の最後の反則は惜しまれるけれど、ワンプレーが全てを決めるような試合ではなかったと思う。80分間にわたってお互いが持ち味を如何なく発揮して、小さなゲームの綾を奪い合った末のラストだった訳だからね。
好ゲームだったと思います。

両チームは、この先どこへ向かっていくだろう。
多少なりともコーチをしている身としては、そのことがとても気になっている。
特に、早稲田だよね。選手権に向けて、彼らは道筋をどのように捉えてくるかなあと。

きっと、明治はシンプルだ。
実際に、明治の方が修正点も明確だ。彼らは自分達の強みを理解している。自分達は、そこで徹底的に勝負するしかない、ということもよく分かっている。あとは、強みが発揮されるエリアでのマイボールを増やすこと。そして、相手のテンポを殺すために、ファーストタックルの精度を更に高めること。端的に言ってしまえば、それだけでいいような気がする。
メンタリティとしても、チームの心をまとめやすいのかもしれない。
「君達はよく戦った。でも勝負の神様が微笑むには、まだ2点足りなかった。それでも君達は、もう一度戦う舞台を勝ち取ったのだから、国立でこの2点分を取り返そう。」
きっとそんなメッセージが、吉田監督から投げ掛けれらているんじゃないか。
まあ、勝手な想像だけれど。

早稲田は、もう少し難しい舵取りを迫られている気がする。
おそらく早明戦というのは、それだけで独立した1つのゴールでもあると思うんだ。
苦しみながらも、まさに土壇場でゲームを引っくり返した早稲田の選手達は、やはり讃えられてよい活躍を見せたのだと思う。勝利を掴んだことは、やはり素晴らしいことだからね。
ただ、ここからは俺の想像になってしまうけれど、辻監督はかなり冷静に修正点を見極めているんじゃないか。更に言ってしまえば、この日のゲームは基本的に「明治のゲーム」だったという総括をされているんじゃないか。少なくとも、明治のシンプルなゲームプランと粘り強いディフェンスに苦しみ、思うようにゲームを運び切れなかったのは事実なのだから。
それでも、勝利を勝ち取った早稲田。
勝利が新たな自信となって、チームを更に高めてくるかもしれない。
でも一方で、修正点への意思の統一は、明治ほど容易ではないかもしれない。

辻監督は、今後チームにどのような言葉をかけるのだろうか。
とても気になるなあ。選手権の早稲田、やはり楽しみです。
「勝利に慢心するほど、ウチの選手はヤワじゃない。」
そんなふうに思っているんじゃないか、という気もするけどね。