Friday, June 28, 2013

わずか5文字で、できること。

ささやかだけれど、書き残しておきたいことを。

1日の仕事を終えて、いつものように田園都市線に揺られながら、およそ1時間。
20:30を過ぎたくらいに青葉台に到着すると、まずは神戸屋のタイムセールでケーキを2つ買って、それから駅前のロータリーでバスを待っていた。買い物にちょっと時間がかかってしまって、ちょうどバスが発車した直後だったので、次のバスを待つ並び順は、トップバッターで。

ベンチに腰掛けて5分くらいかな、次のバスがすぐに来て。左手のケーキが傾かないように気をつけながら、運転手さんしか乗っていないそのバスに最初の乗客として乗り込むと、PASMOで支払いを済ませて後方のシートに向かっていったんだ。

その時、後ろから声が聴こえてきた。
「こんばんは」
それは、俺の次に並んでいた2人めの乗客が、運転手さんにかけた挨拶だった。

ただ、それだけのこと。
でも、その何気ない自然なひとことが耳に飛び込んでくると、なぜだか俺まで気持ちが晴れやかになり、そして次の瞬間、自分がおそらくは無表情のまま、言葉ひとつもなくPASMOを通していたことが恥ずかしくなった。

素敵な、いい声だったなあ。
運転手さん、きっとすごく嬉しかったんじゃないかと思う。直接語りかけられた訳でもない人間も、心の曇りをさっと拭き取ってもらったような気持ちになったのだから。

Sunday, June 23, 2013

本当に「いい」プレーのことを。

6月24日(日)
IRBパシフィック・ネーションズカップ2013@秩父宮ラグビー場
日本代表 38-20 アメリカ代表

前半こそディフェンスでやや淡白なシーンも見られたものの、終わってみれば快勝。
歴史的勝利となった6/15(土)のウェールズ戦に始まって、因縁のカナダ、そして本日のアメリカと、見事に3連勝で飾ってくれたジャパン。間違いなく強くなっている。残念ながらライブでの観戦とはいかなかったけれど、TVで観ていても学ぶべきポイントが本当にたくさんあって、3試合とも非常に面白かった。今秋のオールブラックス戦も、今から楽しみだ。(こればかりは、もう秩父宮しかない。)

さて、アメリカ戦。
ペナルティトライを奪ってみせたスクラムを筆頭として、ゲームを決定づけたポイントは幾つもあると思うのだけれど、個人的にすごく印象的だった小さなプレーのことを、この場に書いてみたい。ゲームの大勢とはあまり関係がないのかもしれない、地味なプレーのことを。

後半37分、敵陣22m中央あたりのエリア。
そこに至るまでのシークエンスを正確に思い出せないのだけれど、ジャパンがアタックで持ち込んだボールをターンオーバーされた。その時、右サイドのポイント際にいて、両腕を大きく振り回して、右サイドのディフェンスラインを引き上げたのが、キャプテンのWTB廣瀬だった。残り時間とスコアを考えると、当然攻め続けるしかないアメリカは、SHがジャパンの左サイドに展開。ラインアタックを仕掛けてきたところを、ちょうど前線に上がってきていたFBの五郎丸(だったと思う)がタックルで喰い止めて、再びラックフェーズに。そして次の瞬間、少しだけ深めのコースでカバーに走っていた廣瀬が、一気に加速してブレイクダウンに刺さっていった。そう、見事なカウンターラック。結局、ジャパンはその後のプレーでアメリカの反則を誘って、敵陣でのチャンス獲得に成功したのだった。

もう勝敗は決まっている中でのプレー。
そこに「がめつさ」がなくても、危なげなく勝ち切れる、そんな場面。
時間は後半37分、最も苦しい時間帯。
そして、エリアは敵陣22m左サイド。背番号14にとって、ある意味で最も遠い場所。

あのプレーを見て、改めて思った。
廣瀬、ほんと凄いなあって。

この3連戦における廣瀬の活躍は、ラグビーファンの誰もが唸るところだろう。
まさに獅子奮迅の働きを見せている。現代のWTBに求められるワークレートの見本になるはずだ。タイミングと身体の使い方で、粘り強くゲインラインを切っていくプレースタイルと、仕掛ける場面を見極める勝負勘で、目立たないながらも数多くのトライに絡んでいる。彼のキャプテンシーはメディアでも度々取り上げられていて、それはおそらく廣瀬の素晴らしい資質なのだと思うけれど、ただ素直に言ってしまえば、プレーがいいのだと思う。さほど派手ではなかったとしても。

ああいうプレーにこそ、見るべきものがあるはずなんだ。
誰も取り上げなくても自分のベストに嘘をつかない、まさしく献身的なプレーに。

Monday, June 17, 2013

ジャパン快勝。そして、格上との戦いを考える。

1日遅くなってしまったけれど、本当に素晴らしいモノを見せてもらった。
新聞も遠ざけておいて正解だった。一般紙の1面をカラーで飾ってくれるなんて。

6月15日(土)
リポビタンDチャレンジ2013 第2戦@秩父宮ラグビー場
日本代表 23-8 ウェールズ代表


快勝。ウェールズ戦の勝利は史上初なので、もちろん大金星なのだけれど、素直に「快勝」でいいんじゃないか。グラウンドで戦っている選手からすると、相当にタフな展開だったのは間違いなく、決して余裕はなかったと思うけれど、観ている側からすると、全体的に安定感があって、大金星という感じは全くしなかった。お互いにミスも少なく、引き締まったタイトな80分間。集中力が途切れることのない素晴らしいゲームをして、「きちんと」勝ってくれたジャパン。ファンとして、本当にうれしい。たとえウェールズ代表が主力を欠いているとしても、そんなことは関係なくて。

前半は、ひたすら自陣での戦いが続く我慢の展開。五郎丸のPGで、辛うじて6-3とリードして折り返したものの、ジャパンからみればほぼノーチャンスだった。そして後半。ジャパンのキックオフで始まってよかった。まず敵陣に入れる。キックゲームで優位に立って、敵陣で長く戦いたい。TVの前で、俺はそんなふうに思っていたのだけれど、五郎丸のロングキックは無常にもデッドボールラインを越えてしまい、後半早々から自陣での敵ボールスクラムという厳しい局面を迎えてしまう。ジャパンは執念のディフェンスで粘り強く喰い下がったけれど、最終的にはウェールズのバックスラインが見事なループからパスを繋いで逆転のトライ。このあたりの時間帯までは、かなりしんどいゲーム展開だった。

それでも、直後の後半8分に、ジャパンも見事な連続攻撃から、最後はCTBクレイグ・ウィングが右中間に再逆転のトライ。五郎丸のGKが安定していたこともあって、少しずつリードの幅が広がってくると、ここから先は「一進一退」の攻防ではなく、「一歩も引かない」がっぷり四つのバトルを、ノーサイドの瞬間まで切れることなく続けてくれた。

勝因は幾つもあるけれど、第1戦と同様、ディフェンスが安定していたことがまずは大きかった。外側でのダブルタックル。インサイドでの低いタックルとブレイクダウンへの執着。それを支えるチーム全体の運動量、そして常に次のフェーズを意識して身体を起こす反応力。そういう地道ながら、ラグビーのクオリティにとって決定的に重要な部分が、80分間を通じて終始安定していた。アライメントがきちんとできれば、十分に守れる。そういうプライドが、選手にはあったのだと思う。観ていて非常に気持ちよかった。やはり、守れないと勝てない。得点力もさることながら、ディフェンスの安定はいつだって金星の大前提だ。

ちなみに、そういう意味では、この試合で1度だけディフェンス網を完全に切られた場面があった。前半25分、自陣左サイドの相手ボールラインアウトから、1次攻撃でロングゲインを許したシーンだ。この場面で、HO堀江、FLブロードハーストの2人が見事なカバーディフェンスを見せて、なんとかピンチを食い止めている。この場面を凌いだのは、「チームディフェンスに対する自信を崩させない」という点で、その後の展開に大きな意味を持っていたと思う。更に言うと、その直後にウェールズが決定的なチャンスで右オープンに展開した場面でも、WTB福岡の内側にいたブロードハーストがしぶとく飛びついて危機を救っている。この2つのプレーが、(前半)6-3という虎の子の3点リードを守ってくれた。これだけでマン・オブ・ザ・マッチでもいいんじゃないか、という素晴らしい活躍だった。

そして、セットプレー。スクラムの安定も非常に大きかった。エディ・ジョーンズは後半のスクラムを最大の勝因に挙げているけれど、後半のジャパンの攻勢は、ラインアウトも含めてFWがセットでいいボールを供給できたことで生まれたのだと思う。やはりラグビーはFWだ。FWが戦ってくれることで、BKは初めて生かされるのだから。この試合についていえば、ブレイクダウンの継続力、ボールキャリアーを孤立させないサポートの集散も含めて、勝利の種を蒔いてくれたのは、結局のところ、FWの頑張りに尽きると思う。


さて、この素晴らしい歴史的勝利から、格上に勝利するための鉄則として何を導き出すか。ここから先は、ジャパンのことをちょっと離れて、ずっと携わってきた大学ラグビーを想像しながら考えてみたい。

まずは、ここまで書いたようにディフェンスとセットプレー。この2つは、特に格上との戦いにおいては必須条件となるだろう。この2つがある程度まで揃わなければ、五分の戦いに持ち込むことも難しい。セットプレーについては要求水準の設定が難しいけれど、スクラムで1mを完全にコントロールされるということは、その後のシークエンスで15mゲインされるようなものだと思った方がいいかもしれない。押し切れなくても、コントロールの手綱は絶対に譲らない。そして、マイボールには徹底的に拘る。

これらがゲームを成立させるための最低条件だとするならば、目指す水準の実力をつけるまでは、他のあらゆる練習を捨ててでも、練習時間を投下するべきなのかもしれない。「十分条件の前に、必要条件を」と言い切ってよいのかどうかは自信がない部分もあるけれど、ディフェンスにしても、セットプレーにしても、「習熟には比較的長い時間を要するが、時間をかければなんとかなりやすい」という特徴があるのは、意識しておいてもいいポイントだと思う。

もう1点は、6-13。つまりFL(6-7)、No.8(8)、SH(9)、SO(10)、CTB(12-13)に安定感と運動力の揃った選手を並べるということだ。ジャパンを見ていても、特にこのナンバーを背負った選手のディフェンス能力と仕事量がチームを支えている。アタックも同様で、このあたりのポジションはボールタッチも必然的に多くなるので、結果的には、彼らがゲームの流れを左右することが往々にして多いのも事実だ。SHなんかは自分でゲインを稼ぐシーンこそ多くないけれど、ジャパンでの田中の活躍によって、SHのクオリティがいかにチームを変えるのか、誰の目にも明らかになったはずだ。いずれにせよ、センターラインが安定するとやはりチームは強くなる。使い古された言い回しにはなってしまうけれど。

いいゲームを観ると、本当に色々と考えるきっかけになるね。

Friday, June 14, 2013

今更ながら、ウェールズ戦。

今更ながら、ラグビー日本代表のウェールズ戦を録画観戦した。
日本代表 18-22 ウェールズ代表(6/8、近鉄花園ラグビー場)

世界ランキング5位のウェールズを相手に、後半20分頃までは常にスコアで先行する展開。最終的には惜しまれる敗戦となってしまったけれど、非常に良いゲームだった。まあ、このクラスの相手はそう簡単に勝たせてくれないものだと思っているけれど・・・。それにしても、惜しかった。

こうした紙一重のゲーム展開に持ち込めたのは、ディフェンス局面においてジャパンの規律(Decipline)が終始乱れなかったことが大きい。ディフェンス網を一瞬にして寸断されるような致命的な綻びは、80分間を通じてほぼ見られなかった。ブレイクダウンのプレッシャーも有効に機能していて、カウンターラックからのターンオーバーにも何度か成功している。これは間違いなく収穫だと思う。バックロー、センターに入った4人の外国人選手が、このあたりのバトルでは獅子奮迅の活躍を見せていた。ここにマイケル・リーチが怪我から戻ってくると、更にチームとしての厚みが増してくるのではないかと思う。

さて、ウェールズとのテストマッチは、もう1戦残っている。
今週末の6/15(土)、秩父宮に場所を移しての再戦。ジャパンにとっては、歴史的勝利をかけたチャレンジになる。俺自身は残念ながら秩父宮に足を運ぶことができないので、勝手に展開を予想してみよう。いや、展開というよりも、ジャパンのアプローチを。

ジャパンのアタックは、SHからパスを受けたファースト・レシーバーがそのままコンタクトに持ち込むフェーズが圧倒的に多い印象だ。SOに入っている立川選手は非常に優れたパサーだけれど、自身で強気に持っていくシーンも少なくない。パスする場面でも、大半は立川選手からのワンパスまでで、SOを起点に2つのパスが続く場面は限定的だ。これに加えて、ジャパンがCh0-1のアタックでシークエンスを重ねる頻度がそれなりに多いことを考えると、ウェールズとしては、外側のディフェンスラインを早めに押し上げても大丈夫だと判断するような気がする。実際、6/8の第1戦でもウェールズがシャロー気味に鋭くラインを押し上げてくるシーンが幾つか見られて、それらは有効に機能していたと思う。ジャパンからすれば、「やむを得ず、インサイドに潜らされた」という感じだろうか。

ただ、ジャパンのランナーは小さな縦方向のギャップを狙っていて、特にボールキャリアーの外側のマークが多少飛び出してくれると、インサイドのプレッシャーを避けながらブレイクコースを取れるので、ウェールズとしては、そこだけにフォーカスしてディフェンスラインを組めばいい。具体的に言うと、キャリアーの正面から1つ外までは、出足の揃いをより意識した守り方を取ってくるのではないかと思う。

そして、ブレイクダウン。ここは第1戦以上にプレッシャーをかけてくるだろう。第1戦でもラスト10分間のコンテストは、集中力と地力で優位に立ってきて、それが結果的にウェールズのゲーム支配力になっていた。第2戦は、キックオフ直後からその意識で臨んでくると思う。ここは覚悟しないといけない。キックゲームをうまく進めて、エリアで優位に立てば、あとは外よりもインサイド、そしてブレイクダウンだ。ウェールズからみると、こういう展開を取ってくるような気がする。いやまあ、とはいえ世界ランキング5位のウェールズなので、あまり相手のことなど意識せずに、「自分達のスタイルを完遂すればいい」というシンプルかつクールな判断しかないのかもしれないけれど。

対するジャパンはというと、結果的に戦術レベルではほぼ変わらないアプローチになるのかなと思う。結局のところ、ブレイクダウンは戦うしかない。相手がどういうディフェンスラインで来るにしても、ジャパンはジャパンのシェイプに拘っていくしかないような気がする。ただ、個人的な印象だけでいえば、ディフェンスライン裏へのチップキックをもう少し増やしてもいいのかなとは思う。第1戦では、アドバンテージをもらっている場面でのみ試みていて、結果的にそれはほとんど機能していなかったのだけれど、相手を走らせる意味でも、アタックオプションを広げて的を絞らせない意味でも、面白い選択肢になるのではないだろうか。ちなみに、WTBの福岡選手がなんとなくバウンド運を持っているように感じられるのも、プラス要素の1つかもしれない。

いずれにしても、肝はブレイクダウンになりそうだ。

Wednesday, June 12, 2013

子どもたちの「今」

もう2週間近く前のことになってしまうけれど、2つのモノを買った。

1つは、ミラーレス一眼。先日うちに遊びにきてくれた大学時代のラグビー部の後輩(ちなみに彼は、NHKのカメラマン)に影響されて、選んだのはOLYMPUS。「PEN E-P3」という旧型モデルの中古機だけれど、これがとてもいい。今の俺のニーズにピタリとハマっていて、写真を撮るのがすごく楽しくなるカメラだ。

写真の魅力を最初に教えてくれたのはNikonのフィルム一眼なのだけれど、どうしてもプリント代が嵩んでしまうので、最近は使っていなかった。RICOHのコンパクトデジカメも持っていて、これもなかなか良いモデルなのだけれど、一眼には一眼にしかない魅力があるので、代替機にはならない感じだった。ミラーレス一眼は小さくて携帯性にも優れているし、ここ最近のモデルの表現力はかなり凄い。趣味として写真を楽しむには、もう十分すぎる感じだ。

もう1つは、iMac。デスクトップPCを買ったのはいつ以来だろう。でも、これまたとてもいい。
俺1人だったらMacBook Airなんかを選んだかもしれないけれど、冷静に考えると、iPadも持っているので「持ち運びたい」というニーズは特にない。そう言ってくれたのは妻で、モノを買うにも視点が違うなあと改めて感じた。まあ、なんてこともないごく普通の話だけれど。

子どもの写真を撮って。Macに取り込んで。iPhotoでタグをつけて、スライドショーにして。ノートブックよりもかなり大きい21インチのディスプレイでゆっくり眺めて。

楽しいんだよね。そういう小さなことが、とても。
過去にiPhoneで撮った写真なんかもiMacに取り込んで、産まれたばかりの頃からの成長を振り返ってみると、なんだか気持ちがすっと落ち着いてきて。

子どもたちの「今」が、そこにある。2人の表情のなかに。
写真を撮っている自分の表情は、きちんと「今」を見せられているかなあ。
今に集中しないと。いつだって今なんだけど、その中でもまさに今といった感じなのだから。

Tuesday, June 11, 2013

『SHARED VISION』

SHARED VISION
  • 作者: 廣田 周作
  • 出版社: 宣伝会議
  • 発売日: 2013/6/4

更新が遅くなってしまったけれど、昨晩おおよそ読了。

著者の廣田さんとは特に面識もないのだけれど、ちょっとした縁があって。 広告業界は全くの門外漢なので、本来想定されている読者層ではないような気がするけれど、まあいいかな。 TwitterやFacebookといったSNSの広がりによって、企業と消費者とのコミュニケーションも変化している昨今の状況において、今後のコミュニケーション設計、あるいは運用といったものがどうあるべきなのかを、「シェアードビジョン(Shared Vision)」というキーワードから整理した1冊だ。

コンテンツに入る前に、本書は装丁がいい。
著者を直接知らないとはいえ、想像するに、おそらく表紙の挿画は相当似ている(笑)。
ブックカバーを外すと眼鏡が取れるという作りも、なかなかおしゃれだ。ちなみに、ブックカバーの素材感もいいんだよね。うまく書けないけれど。

シェアードビジョン。端的に言えば、企業の経営者、社員、そして消費者(生活者)のそれぞれが共有できる理想像といった感じだろうか。「理想像」という言葉だと実際にはちょっと硬くて、もう少しフランクに表現すれば「ワクワク感」といったようなものかもしれない。企業として消費者に伝えたい思いもあれば、消費者として企業に求める期待値もあるけれど、どちらの立場から見ても、「楽しみを共有したい」という変わらない根幹がきっとある。それをコミュニケーションの中に上手に設計してあげることで、ソーシャルな時代における戦略の1つとして活用していくための方法論が、本書では具体的に紹介されている。このあたりは、企業風土も絡み合って、これから巧拙がはっきり出てきそうなエリアかもしれない。

ただ俺としては、ビジョンをシェアするコミュニケーション設計の前に、そもそも(特に企業における)ビジョンをビジョンとして成立させるフェーズの方に、より興味があるかな。ビジョンの輪郭を定めるというか、余計なものを削ぎ落としてクリアにしていくプロセス。組織内でも、組織間でも、あるいはB2Cの領域においても、ビジョンが共有されない理由の一端は、コミュニケーション・マネジメントではなくて、ビジョンそのものが内包している課題なのかもしれないからね。