Monday, April 23, 2007

3人の猛者に感謝

4月21日(土)14:00-16:30 練習@駒場グラウンド

日曜日に今シーズンの開幕戦を控えた東大ラグビー部の練習に、3人の素晴らしいゲストが来てくれた。社会人ラグビー時代にお世話になったPRの大先輩、文原さんと大吉さん。そして後輩の佐藤大作選手ね。

素晴らしい1日だった。本当に感激した。
文原さん、大吉さん、大作の3人には、心から感謝しています。
本当にありがとうございました。

3人にとって東大ラグビー部は、言ってしまえば何の縁も無いチームだ。
駒場に足を運ぶことは、何の義務でもなく、必然性もない。
それでも、これまで20年近くの歳月をラグビーに捧げてきて、やっと一息ついたばかりの文原さんや、いまだ現役として活躍している大吉さんや大作が、貴重な時間を割いて駒場のグラウンドに足を運んでくれたことが、本当にうれしかった。
これほどうれしかったのは、以前、小寺さんが駒場に来てくれた時以来だね。
色んな人が、コーチになったばかりの自分を支えてくれる。
まだ今シーズンは始まったばかりだけれど、今年の東大ラグビー部に何かを伝えて、学生と一緒に自分も成長していくことで、皆に恩返しがしたいと思ってます。

さて、肝心の練習。
社会人の第一線で活躍するPR3人が揃ったことで、FWは勿論スクラムだよね。
おれはBKの練習を学生に任せて、練習の仔細をずっと見つめていた。
そして、驚いた。
スクラムの奥の深さと、特に文原さんのスクラムを突きつめた言葉が衝撃だった。
全ての動きに理由がある。足の踏み方や置く位置、姿勢の取り方、膝の角度、肩のライン。慣性に任せた動きはひとつとしてなく、全ての部位に合理的な根拠を持って、身体をコントロールしているような感じだった。
学生にアドバイスをしてくれている時に、おれは横でずっと聞き耳を立てていた。
勉強になるよね。個々のプレーを徹底的に考えて、身体で覚えた感覚に合理的な根拠を与えて、またそれを身体に刷り込んでいく。それって、スクラムに限ったことではなくて、あらゆるプレーに共通することだからね。

練習後は、お決まりの鉄板焼き「楓」に寄って、4人で晩飯を食べた。
自分の胸の内にしまっておくけれど、いい話を沢山もらった。
だから、この日3人から最も多くのものを吸収したのは、絶対におれだと思ってます。

そして、翌4月22日(日)の開幕戦。
成城大を相手に30-17だったかな、まずは緒戦をものにしました。
右PRで出場した松林は「昨日教えてもらったことがすごく生きました」って。
本当に、ありがとうございました。

Friday, April 20, 2007

Perth #4

4月12日、木曜日。
5日間の滞在もこの日が最終日なので、おみやげを買おうと1人で街に出た。

この日がいちばん難しかった。
5日間の滞在の中で、この日、初めて目的的に動いてしまったからね。
「おみやげを探す」という明確な目的を持って、良いものを探し歩いたのだけれど、ただそれだけのことでも、目に映る街の景色はがらりと装いを変えるんだ。

折角オーストラリアに来たのだから、この街にちなんだものを買いたくて、色々なお店を廻ったのだけれど、しっくりくるものが見つからなくて・・・。
正直に言うと、買い物はまったくもって苦手なんだ。
まあでも、結果的には、納得出来るものを自分なりに見つけ出すことが出来た。
何を買ったかは、内緒だけれど。

日も暮れてきた19時頃かな。
街の中心部に戻ってくると、ちょっと歩き疲れもあって、郵便局とデパートに挟まれた通りのベンチに座って休憩していたんだ。あとは帰るだけだなー・・・って。
すると、ちょっと嬉しいことがあった。
ベンチで暫くのんびりしていると、どこからか20人近い集団がやってきて、通りに円を作って音楽を始めたんだ。パーカッションの男性がリズムを取り始めると、まるで自然発生的に(勿論、自然発生ではないのだけれど)、他のメンバーが歌い出す。気づいた時には、すごく楽しそうなコーラスが生まれていて、なんだかとても良かった。
かなり陽も落ちてしまった時間だったけれど、座って眺めている人も少なくなかった。

でも、本当に良かったのはその先。
メンバーの誰かの娘と思われる少女が、1人リズムに乗って踊っていたんだ。
その姿が、とても微笑ましくて。
Perth駅へと続くこの通りは、デパートに面している側にちょっとした段差があるのだけれど、所々に半円形状の、通りに迫り出した部分があるんだ。
ちょうどステージのようにね。
その少女は、まさにそのステージに1人立って、メンバーの歌に合わせて身体をスイングさせたり、何度も側転してみたりして、ずっと踊っていた。誰も観ていなかったかもしれないけれど、其処は完全に彼女の舞台だったよ。本物のステージだった。

少女はその後、集団の方に戻ると、円の中心で逆立ちしようとして倒れてしまって、大泣きしていた。痛かっただろうけれど、でも、おれが眺めていたほんの短い時間の主役は、間違いなく彼女だった。
だから、遠く日本から声を掛けてあげたい。「とっても格好良かったよ」って。

終わってみると、充実した5日間だったね。
1人旅をしていた訳では決してないのだけれど、1人旅のように過ごして。
1人であるが故に想起されるものたちの存在を、ずっと忘れずに。

Tuesday, April 17, 2007

Perth #3

4月11日、水曜日。
また1人でホテルを出ると、最寄駅のBurswoodから電車に乗り込む。
Perthで乗り換えて、そこから2駅。Glendaloughという駅で降りると、今度は駅前でバスをつかまえる。揺られること20分位かな、向かった先はタクシーの運転手さんが「Perthで最も美しい」と教えてくれたビーチ、Scarboro beachだ。

Scaboro beachの最寄りのバス停を降りて数十メートル歩いた先には、インド洋。
驚いた。色の違いに見惚れてしまった。
エメラルドブルーというのか、あの海面の青の美しさは、ちょっと日本では見ることが出来ない。透明感と深みが同居したような輝かしい青が、本当に美しかった。
海って、あんなに色が違うんだね。

この日は天気にも恵まれて、上空は見事に晴れ渡り、日差しが痛いほどだった。
強烈な紫外線は思わず目を塞ぎたくなるほどで、しばらくビーチの写真を撮り歩いた他は、1時間近くずっと日陰でのんびりしていた。海水浴をするでもなく、サーフィンをするでもなく、ただ日陰にいたのだけれど、なんだか幸せな時間だった。
勿論サーファーはサーファーで、最高の海を満喫していたと思うけれど。

ただ、被写体としての「海」は、おれにはちょっと難しいね。
街の方が、遥かに面白い。
海は広すぎるからね。もっと雑多で混沌としていて、多様な匂いがある場所の方が、被写体としては自分に合っているように感じる。例えば「東京」が被写体として面白い理由は、そんなところにあるのかもしれないね。

午後になってScarboro beachを離れると、バスに乗って再びPerth Cityへと戻る。
次に足を運んだのは、Perth駅のすぐ北側、ノースブリッジ(NorthBridge)と呼ばれる一帯において、WA美術館と共に構えるArt Galleryだ。
http://www.artgallery.wa.gov.au/

このArt Galleryを訪れようと思ったのには、理由があるんだ。
それは、ちょうど開催されていた企画展「RAISED BY WOLVES」のポスター。
使われた写真は、日本の若手を代表する写真家、ホンマタカシのものだったんだ。
アジアの孤島日本から遠く離れたこの場所で、日本人写真家の作品に触れることになるとは思っていなかったのだけれど、その偶然に何故だか惹かれてしまった。

断っておくけれど、ホンマタカシの写真が特別に好きだという訳ではないんだ。
勿論、綺麗な写真を撮る人だということは知っていたけれど。
でも、実際にGalleryに展示された数々の作品を観ていると、ホンマタカシの数点の写真は、他の作品と比較してもクオリティの高いものだったと思う。透明感があって、ホンマタカシらしさを明確に感じ取れる作品だった。

ホンマタカシに限らず、Galleryに展示された作品群を観ていて思ったのは、日本人の美的感覚は、世界的にも非常にレベルが高いのではないか、ということ。日本人の感性とのフィット感の違いもあるのだろうとは思うけれど、WA(Western Australia)出身の作家達が出展していた数多くの作品と比較すると、日本で目にするアートの方が、総じて作品としてのクオリティが高いように感じた。
繊細かつ丁寧に美を結実させていくスタイルが、日本は秀でているのかもね。

夜になると、再びキングスパークへ。
キングス・パークの夜景は本当に素晴らしかった。
滞在期間中、キングスパークには実は3回も訪れてしまったのだけれど、何度来ても飽きることがなく、非常に良い場所だった。日中、夕暮れ時、そして夜と、様々な時間帯に訪れて、その都度、見える風景が違っていたことも、とても楽しかった。
春夏秋冬が違えば、きっとまた別の表情があるのだろうね。

Saturday, April 14, 2007

Perth #2

4月9日、月曜日。
1人でホテルを出て、Subiacoという街に向かう。
ホテルの最寄駅から電車に乗って、15分程度のところにある街だ。

電車に乗り込んで、隣に座っていた女性に声を掛けてみる。
「Subiacoへ行きたいのだけれど、この電車でいいですか」
その女性はとても親切に、笑顔で応えてくれた。
折角なので、聞いてみる。「1枚写真を撮らせてもらえませんか」
電車の中なので多少恥ずかしそうにしながらも、彼女は写真を撮らせてくれた。
ケリーさんというこの女性の親切とフレンドリーな姿勢がとても印象的で、この時からもうひとつの方向性が自分の中に芽生えてくる。
それは、Perthに暮らす人達の表情を、とにかく写真に撮ること。

その後、帰国の途に就くまでの5日間を通して痛感することになるのだけれど、Perthという街の魅力は、なによりも「そこで暮らす人間」なんだ。人間の魅力的な姿。
例えば、市街で佇む人達の表情。
ゆったりと、生活をエンジョイしている雰囲気。
ストリートで演じる大道芸人と、彼らを取り囲む人達の笑顔。
そういったものが、とても素敵な魅力を創り出して、街全体を支配している。
そして、実際にPerthで出会った人達の殆どが、とても親切で、そしてフレンドリーだ。東京では考えられないくらいに人なつっこく、見知らぬ他人に対して優しい。
道を尋ねるとする。日本でも、聞かれれば最低限の英語で答えるだろう。
Perthの人達は、例えば視線をあちこちさせながら通りを歩いていると、「バス停を探しているんですか?」と問いかけてくれたりする。自分自身で説明出来ない場所を尋ねられた時に、ガイドできる人間を探してくれようとする。感覚的なものだけれど、この差は随分大きいように思う。とても、人間的だよね。

話を戻すけれど、Subiacoの駅を降りると、歩いて15分程のところにある公園、キングスパーク(Kings Park)に行った。Perth Cityの南西側に位置する有名な公園で、スワン川を挟んだ高台からPerth市街を一望できる絶好のスポットになっている。

この日は復活節(Easter Monday)という祝日で、複数の家族・友人達が公園でピクニックをしていた。そんなことも知らずにおれは、あるおじさんに声を掛けたのだけれど、そのうち彼の奥さんが登場して、「ジャパンからの客だ」と言い出して、気づいたらピクニックに混ざっていた。おばさん連中にワインを一杯勧められて、30分程度のことだけれど、一緒に時間を過ごした。滞在期間中、とても嬉しかったことのひとつだ。

その後、キングスパークからの眺望を一通り楽しんだ後、一旦市街に戻ると、今度は電車で30分程南下していった先にある港町、フリーマントルへと向かう。
フリーマントルには、E倉庫マーケット(E-shed Market)、フリーマントルマーケット(Fremantle Market)という2つのマーケットがある。どちらも休日・祝祭日しか開催していないので、ちょうど良い機会と思い、1人で散策していく。マーケット自体は特別なものではなかったけれど、海に面したE-shed Marketのオープンテラスで何も考えずに寛ぐのは、とても気持ちの良いものだった。

もうひとつフリーマントルで面白かったのは、大道芸だ。
中心部を走る大通りで、何人もの大道芸人が路上パフォーマンスを演じていた。
英語を理解できれば、おそらくもっと楽しかったんだろうと思う。それでも、観ているだけで十分に面白かった。ジャグリングだったり、パントマイムだったりね。
結構な人数がパフォーマーを取り囲んで輪を作り、通りに面したレストランの2階席のお客さんも身を乗り出して、気づいた頃には、通り全体に一体感が醸成されていく。英語を理解できないおれが聞いていても、MCのイントネーションや観衆との掛け合いは非常に巧みで、即興性・ライブの魅力を感じさせる。
子供は特にそうだけれど、観る側の乗っかり方もとても上手だよね。演じる側だけでなく、観る側も一緒になって、お互いで楽しい空間を創っていくようなことが、慣習的に得意なのかもしれない。
そんな訳で、夕暮れ時くらいまで、ずっと大道芸に観入ってしまっていた。

楽しかった。
朝から晩まで歩き廻って、ちょっと疲れてしまったけどね。

Perth #1

4/7(土)から、しばらく日本を離れていた。
行き先はオーストラリア南西部に位置する美しい街、パース(Perth)だ。
わずか5日間の短い滞在だったけれど、なかなかに楽しい旅となった。

4/8(日)のお昼頃に現地に到着すると、まずはPerth Cityへと向かう。
宿泊先のホテルから約5km、タクシーで$15程度の道程だけれど、折角なので1人で歩いてみる。持ってきたNikon FM10を首から提げて、予備フィルムを3本ポケットに突っ込んでね。

Perthの街並は特別変わったものではなく、ありふれた街の一風景といった感じだ。
ショッピングモールがあり、ブティックがあり、カフェがある。
市内を廻る無料のバスがあり、全体的にゆったりとした流れが街に広がっている。
ちょうど日曜日で、閉まっているお店が多かったこともあるかもしれないけれど。

それほど広くはない街の中心部を歩きながら、目に留まるものを写真に撮っていく。
目新しさのある街ではないけれど、カメラを持って歩いていると、飽きることがない。
街には空気や匂いがあるし、街を歩いている人達は、それぞれの街で違うからね。
まずはウォーミングアップの感覚で、気軽にシャッターを切っていく。この日は結局、50枚くらい撮ったかな。奇抜な顔をしたマネキンや、倒れかけた標識や、ベンチに腰掛けて休んでいるおっさんや、そういった諸々のものを、とにかくファインダー越しに覗き込んで、シャッターを切って、また別の道を歩いてみる。

それが、とても楽しかった。
目的もなく、ただ歩いて写真を撮る。それって、最高の贅沢だ。
この時に、自分自身の中で、ひとつの方向性を決めたんだ。
「この5日間は、無目的を目的にしよう」って。

人はすぐに、何かをしようとする。
何かを体験しよう。何かツアーを組んで、何か美味しいものを食べよう。
そうやって、折角オーストラリアにいるのだからと、目的的に行動しようとする。
でも、敢えてその枠組みの外側に出てみるのも、悪くないかなと思ったんだ。

勿論おれだって、「写真を撮る」わけで、何もしない訳ではない。
でも、写真は散歩の一過程でしかない。(ちょっと言い過ぎかな。)
何かを撮りたい、という行為も勿論ある。Perthの夕景を撮りたい、とかね。
それでも、基本的な感覚としては「散歩」だ。目的的な移動じゃない。
他人から見ればどうでもいいことだと思うのだけれど、自分自身の意識、気分として無目的的に過ごすことで、結果的に、自由が得られたような気がするんだ。
おれにとってそれは、ちょっとした発見だった。

5日間を通じて、36枚撮りのフィルムを12本撮った。
実質的には4日で撮ったので、1日あたり3本程度ということになる。
1日5本は撮ろうと思っていたのだれど、量を撮るのは思った以上に難しいね。