辺見庸さんの『いま、抗暴のときに』(講談社文庫)から。
闇を撃つのは光じゃなくて、もっと濃い闇なんだよ。心はそうつぶやく。闇に分け入るか、闇に肉薄する言葉をもつことだ、と自分にいいきかせる。(94頁)
辺見庸さんは、ここ数年間ずっと頭の片隅で存在が揺らめいていた作家だ。
『もの食う人びと』というノンフィクション作品のことを新聞の書評かなにかで知って、以来いつか読もうとずっと思っていたのだけれど、書店で著作を見掛けると、何故だかいつも手に取るのが憚られてしまう、そんな作家だった。
数年を経た今、このタイミングで手に取ったのも、なにかの縁かもしれない。
最初に手にしたのは『もの食う人びと』ではなかったけれど。
『永遠の不服従のために』をつい先日読了し、今はその続編『いま、抗暴のときに』を読んでいる。辺見庸さんは、言葉に「質感」のある作家だ。乾ききった言葉ではなく、あるいは清流のような澄み切った言葉でもなく、血潮のような独特の「濃度」を持った言葉を重ねてくる。その思想信条に対する賛否は別として、言葉に凄みを感じさせる作家であり、読む側の心をざわつかせるような何かがある。
一連の著作を読み終えた時には、改めて所感を書いてみたい。