Monday, June 06, 2011

チーム

6月4日(土)
名古屋大 45-12 名古屋学院大(14:00K.O. @名古屋学院大グラウンド)

名学大は昨シーズンにA1から陥落して、今シーズンは同じA2を戦うチーム。
本来は1つの目標になる相手だけれど、失礼を承知で言うならば、この日の名学大はそういうチームではなかった。試合前のアップを見ていて、十分戦えると思った。ゲーム開始直後に、その思いは確信に変わった。その意味では、メンバー構成が若干不安定ながらもきちんと勝利したことは収穫。ただ、このゲームを象徴しているのは、むしろ失った12点の方だ。

19-5で折り返したハーフタイムに、ちょっと厳しいコメントをしたんだ。
「全然甘いゲームだ」って。
前半40分間を通して危ないシーンも殆どなく、3つのトライを奪って戻ってきた選手の感覚はきっと違っただろう。でも俺としては、全く納得できないゲームだった。むしろ、選手自身に前半のパフォーマンスを「甘かった」と自己評価している様子がなかったことが、残念でならなかった。

ハーフタイムに言ったのは、「自分達自身でゲームを壊している」ということ。
開始早々にバックスが無責任なプレーをして、大外でボールをロストする。
カウンターアタックでロングゲインした味方に対して、サポートが寄って来ない。
自分達のミスから自陣に張り付いてしまうと、ディフェンスでは反則の連続。
順目に走るのがチームの約束なのに、順目にスタートを切らないフォワード。
スクラムを何度もターンオーバーできるような有利な状況で、この程度のスコアにしかならないのは、こうした当たり前のことが出来ていないからだった。

「すべきことをきちんとしていない」というだけで、つまらないゲームになるんだ。チームの為になぜ必死にならないんだ。責任感のないプレーするなよ。試合前の円陣で「名学粉砕」と檄を飛ばしたのは何だったんだ。本当に粉砕する気あるのか。

このくらいは言ったかな。
この程度のプレーで、自分達の実力を過大評価も過小評価もしてほしくなかった。
自分達のプレーが凄い訳じゃない。過大評価するようなものじゃない。
でも、意識ひとつでもっと上のプレーができる。
この程度で「結構できてきた」なんて過小評価もしてほしくない。
「自分達が今、持っているもの」をきちんと認識して、その全てを出してプレーする。
それこそが、大学ラグビーにとって最も大切なことだと思うんだ。

「自分達」というのは自分だけじゃない。
チームとして戦うことで、パフォーマンスが最大化されるような、そんなチームを名古屋大には目指してほしい。ただ15人が同じグラウンドにいる、というだけならば、チームでも何でもない。チームというのは、お互いの間に信頼関係があって、だからこそ1人ひとりのメンバーが自身の責任に集中できるような、仲間が最高のプレーをするために自分自身を犠牲にできるような、そういうものだと思うんだ。

バックスの1次攻撃で、CTBがラインブレイクする。
相手のディフェンス網が機能せず、そのまま独走になったとする。
俺が見たいのは、それでもCTBに対してサポートしてくる人間なんだ。CTBが抜けた瞬間、FBと対峙した時に彼をサポートするためのスタートを切っている人間を見たい。彼が1人では状況を打開できずにクロスキックを転がした時のために、遠く離れたポイントから真っ直ぐ押し上げてくるロックの姿を見たいし、仮にトライライン直前で追いつかれてしまったとしても、そのボールを即座にダイブパスで逆目に戻せるハーフが見たいんだ。

フォワードが、密集戦で必死のディフェンスからターンオーバーをしたとする。
このボールを絶対に落とさないという覚悟で展開してほしいんだ。ジャッカルしてくれたフランカーがポイントから頭を上げた時のために、絶対にやつのいる場所よりも前にボールを運ぶのだという必死さを持ってほしい。そのボールをもし落としてしまったならば、絶対にセービングしてほしいし、翌日以降の練習では、他の選手よりも30分早く来てキャッチングの練習をしてほしい。

信頼関係の芽というのは、そういう小さなことの中にある。
とても小さなこと、でも絶対に譲ってはいけないことに、正面切って拘っていくことで、信頼関係は培われていく。ただ同じグラウンドにいるだけで、自然と生まれるような簡単なものじゃない。
そしてこれこそが、「チーム」となるための必須条件だ。

名古屋大ラグビー部は、厳しい見方をすれば、まだチームになりきっていないんだ。
みんな真面目で一生懸命なのはよく知っているのだけれど、信頼関係に基づいた「チーム」を作っていくためには、それだけでは足りないんだ。
信頼って、もっと厳しいものだから。

でも、この日のゲームはきっと、1つの気づきを与えてくれたと思う。
6月の1ヶ月間が、とても大切です。
夏合宿までに、もう1つ上のレベルの厳しさに向き合ってもらいたいです。