Thursday, August 09, 2007

曖昧にしない態度

くるりの新曲が頭から離れない。

ところで。
久しぶりに村上龍さんの著作を読んでいる。消耗品シリーズの最新作ね。
村上龍『すぐそこにある希望 MEN ARE EXPENDABLE Vol.9』

相変わらず、素晴らしいエッセイの数々。
まだ50頁程度しか読めていないけれど、心を突き刺す指摘とフレーズに溢れている。
読んでいて痛切に感じるのは、龍さんが一流の表現者として、メッセージすべきターゲットと、その際の論点を、非常に厳密に、極めて繊細に意識しているということ。

例えば、日本の外交政策。
龍さんは「日本は外交的にほぼ全てのリスクをブッシュ政権にファイナンスしてもらっている」と指摘した上で、それ自体の是非ではなく、その事実に対して、大手既成メディアが一切のアナウンスメントをしないという現状を批判的に語る。
「つまり、あなたはどうしたいのか」と問う人間がいてもおかしくないところだが、このスタンスこそが、村上龍という作家の適正さだと思うし、ある問題に対して、徹頭徹尾厳密であろうとする、はっきりとした強い意識なのだという感じがする。
メッセージの目的は、対米政策そのものではないんだ。
大手既成メディアを批判的に論じることで、そうした報道環境、あるいはメディアの発するアナウンスメントを受容する側の環境を醸成している何か、より深層に根付く精神性のようなものに、様々な角度からアプローチしようと試みているのだと思う。

曖昧にしない態度をキープし続けるのは、相当の体力と根気を要する作業だ。
この視点を持ち続けることこそが、龍さんの比類ない存在感の根拠なんだろうね。

続きを読むのが楽しみで堪らない。