Thursday, March 20, 2008

シャロー

「心の主導権」
今日、最も心に残った言葉だ。

早稲田大学OBで、元ラグビー日本代表CTBの横井章さん。
大西鐵之祐監督率いるジャパンの主将を務めたパスの名手だ。
その横井さんが、東大ラグビー部の臨時コーチングとして、駒場に来てくれた。
コーチングは、3/19-20の2日間に渡って行われたのだけれど、おれは2日目の3/20(木)だけ参加させてもらった。

横井さんの名前は、学生時代の恩師である水上さんから何度も聞いていた。
現役時代は「パスの名手」として名を馳せた日本を代表するセンター。
指導者としても、京都成章高校のコーチとして伏見工を撃破し、同校を花園出場へと導くなど、数々の実績を持つ名コーチだ。
その横井さんが、東大ラグビー部の学生に何を語ってくれるのか。
ずっと楽しみで仕方なかった。

この日は生憎の雨だったこともあり、大学の教室でのレクチャーとなった。
午前/午後の2回に分けて、映像を交えながら、セッションが進められた。

まず驚いたのは、横井さんが現役として出場している当時のジャパンのVTRだ。
「伝説のシャロー」というものを、初めて映像として見せてもらった。
狂ったように鋭く早いプレッシャーは尋常じゃない。強豪国とのテストマッチで、相手SHからのパスを受けたSOを、ジャパンの選手はツメ切っていたからね。
個々のプレッシャーの鋭さもさることながら、チームとしての徹底力も凄い。
次から次へと湧いて出てくるタックラー。
明確な意図を持って、緻密に構成されたシャローなのだということがよく分かる。
そして、伝説に違わないパス。
絶妙の間合いでパスが放たれた次の瞬間、横井さんは倒され、隣の味方は見事に生かされている。スペースにボールを置いてくるような、柔らかいパス。
本当に凄かった。

セッション自体も非常に興味深かった。
学生時代に水上さんから教えてもらったラグビーそのものだったね。
特別なことを言っている訳ではないのだけれど、すっと腹に落ちる。
論理を貫く原則が明確で、とても分かりやすかった。

「心の主導権」は、今回のセッションの中で繰り返し発せられたメッセージだ。
ラグビーを考える上で、横井さんは常に「心の主導権」を念頭に置いている。
相手陣内でPKのチャンスを得たとする。
ゴールを狙うのか。タッチに蹴り出して、LOモールからトライを狙うのか。
正解はないけれど、横井さんは「心の主導権」を考える。
3点を先行することで得られる優位は勿論あるだろう。しかし一方で、敵陣深くで攻め続けることの優位だってあるかもしれない。ゲームを支配する為の選択というのは、その時の試合の状況や彼我の能力等によって考え方は様々だと思うけれど、判断の根拠として「心の主導権」を据える姿勢に、非常に新鮮な感覚を覚えた。

こういう部分にこそ、横井ラグビーの本質があるのかもしれないね。