Thursday, September 22, 2011

惜しまれる一戦。

ラグビーW杯、予選プールA
日本 18-31 トンガ

ジャパンのことは心から応援しているけれど、正直、観ていて辛いゲームだった。
ラグビーを愛する多くのファンが、同じような思いを抱いたのではないかと思う。

出来ることならば、もっとジャパンの強みを生かした戦い方をしてほしかった。JSportsで現地リポートをされていた村上晃一さんの言葉にもあったように、この日のジャパンは「慎重さ」をやや欠いていた。不利なエリアで不用意なアタックをして、小さなミスから必要のない失点を重ねてしまう展開。素直な印象で言うならば、典型的な負けパターンに嵌まり込んでしまっていた。一方のトンガは、ジャパンが露呈した小さな隙を逃すことなく、エリアとポゼッションを確実に奪うと、SOモラスの正確なゴールキックから着実にスコアを重ねていった。そう、小さな隙。それは例えば大事な局面でのハンドリングエラーや自陣でのペナルティ、あるいは幾つかの局面におけるプレー選択のミスだったりするのだけれど、1つひとつの小さな隙が致命傷になってしまうのが、W杯の怖さなのかもしれない。

勿論、トンガの勝因はそれだけではない。最大の要因は、言うまでもなくブレイクダウンだろう。80分間に渡っての執拗なプレッシャーは圧巻だった。 ポイントに対する寄りが全般的に遅れ気味だったジャパンは、トンガのパワフルなヒットとボールに絡みつく圧力に、終始苦しめられた。ジャパンとしては、ここまで劣勢に立たされるとは正直思っていなかったのではないかという気がする。あのブレイクダウンへの徹底的な拘りは、トンガを讃えるべきかなと思う。

ジャパンの戦術であったり、ゲームマネジメントについては、W杯終了を待つことなく、色々な人が、色々なことを言うだろう。間違いなく批判の矛先が向かいそうなポイントも、現時点である程度まで想像できる。そしてそれは、勝負の世界では仕方のないことだとも思う。
でも今は、残されたカナダ戦のために、全てを捧げて集中していってほしい。
W杯という舞台のためにジャパンが捧げたこの4年間の全てを賭けて、最後にジャパンのベストバウトをしてもらいたいと、心から願っている。
トンガ戦は惜しまれるゲームだったけれど、もはや過去でしかないのだから。

ちなみに、トンガ戦で最も心に響いたのは、やはりマイケル・リーチの姿。
本当に素晴らしかった。まさに獅子奮迅の活躍。彼はこのW杯における全ての瞬間で、魂を感じさせるプレーを続けているね。今のジャパンで、個人的には最も好きな選手です。
そして堀江、畠山というフロントローの2人も素晴らしかった。リーチを含めて、この3人のプレーには特に惹かれるものがあった。興味深いのは、リーチや堀江が持ち込んだボールをターンオーバーされるケースは極めて少ないということ。例えばアリシ・トゥプアイレイや遠藤に代表されるようなフィジカルの強いタイプの選手と比較しても、ボールの活かし方は秀でていると思う。これは、ジャパンの活路を考える際のヒントになるのではないかと、個人的には思っている。トンガのようなタイトなプレーの得意なチームに対しても、身体を柔らかく使ってボディ・ポジションをコントロールしたり、ターンのようなヒットの芯をずらすようなプレーは有効に機能していて、狭いスペースを上手にドライブで抉じ開けたシーンというのは、局所的に見れば大半がこういった「柔らかさ」に起因していたと思う。「柔よく剛を制す」と言ってしまうと少々誤解を招くかもしれないけれど、ジャパン、ひいてはフィジカルでの劣勢に向き合っていかざるを得ない多くのラグビーチームにとって、目指すべき1つの形ではないだろうか。