名古屋大学ラグビー部のシーズンが、本日開幕した。
緒戦の相手は、今シーズンからA2リーグに昇格してきた名古屋経済大学。
社会人時代の先輩、肥後さんがヘッドコーチを務めているチームだ。
今シーズン、名古屋大が掲げたチーム目標は『A2リーグ全勝、A1リーグ昇格』。
でも、この日の結果は28-31。
とても残念なことに、緒戦をもって早くも目標の修正を余儀なくされることになった。
スコアが示している通り、チーム力に顕著な差はなかったと思う。
双方共にミスが多くて、お互いに流れに乗り切れないようなゲームだったけれど、大局的に捉えれば、前半(0-17)は完全に名経大のゲーム。後半、風上に立った名古屋大がうまくゲームを運んで3トライを奪い、後半20分までに21-17と引っくり返したのだけれど、ここがゲームの綾だった。自陣10m付近のブロークンな状況から大外展開で持っていこうとした名古屋大が、ミスから流れを失うと、名経大の逆襲を防ぎ切れずに再逆転を許してしまう。21後半ラスト10分を切ってから10点差まで点差が広げられた時点で勝機はほぼ失われ、終了間際に1本返すのが精一杯だった。
ラグビーのレベルを問わず、ゲームには流れというものがある。
手繰り寄せるのも、失うのも、自分達次第。
風下の前半、敵陣で不用意なペナルティを繰り返してしまう。
相手の得意パターンであるインサイド主体の攻撃を、分かっていながら狙い撃ちできない。
我慢の時間帯に、一度は相手のジャージを掴んだ指を、簡単に離してしまう。
0-17は、自分達で招いた当然の展開だった。
それでも後半、風上からキックでエリアを確保すると、FW・BK共に持ち味が生きてくる。敵陣22mライン付近からのモールをFWが押し込んで反撃の狼煙を上げると、今度は敵陣10mあたりからの連続攻撃からBKがラインブレイクして連続トライ。この時点で、名古屋大がすべきことは完全に見えていたはずだった。
後半の残り時間は20分弱。風上で4点差。
名古屋大にとってのスコアへの射程距離は、敵陣10mライン。
スクラムは劣勢だが、FWのモールは計算できる。
ブレイクダウンでのボールへのプレッシャーは決して強くない。
執拗な絡みもないので、孤立しなければボールはリサイクルできる。ロストの大半はミスだ。
相手は自陣からでも展開してくるチーム。キックのオプションは少ない。名古屋大のキックに対しても積極的にカウンターを仕掛けてくる。でも、CTBの戻りは早くない。
これだけの条件が揃って、チームが何を選択するか。
ここがゲームの分岐点。そして、この日の名古屋大が流れを失ったのが、まさにここだった。
確かにチャンスはあった。
それは間違いなく事実で、積極的に展開しようという意志を否定するつもりもない。
それでも、チームの状況とゲーム全体の流れを見れば、考えるポイントは他にあったんだ。
4点差というのが、自分達にとってどの程度のアドバンテージなのか。
そこにあるチャンスフェーズは、スコアのチャンスなのか、 10mゲインのチャンスなのか。
その時間帯、その局面において、相手は何を考えているのか。
そういったことを、もっと考え抜かないといけない。
もっと思考して、それを身体で表現できるように。
リーダーの思考を、15人のパフォーマンスにすっと落とし込めるように。
こんなところで、つまらない試合をしていては勿体ない。
何よりも、自分達がこれまでにグラウンドで費やしてきた時間がね。
チームは緒戦から苦境に立ってしまったけれど、もう終わったゲーム。過去は取り戻せない。
次のゲームから、チームを立て直すしかない。そして、そのためにすべきことは1つしかない。
そう、練習を変えていくしかないんです。頭も身体も、常に全力を投じて。