- 作者: トム・デマルコ、undefined、トム・デマルコのAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら、ティモシー・リスター、undefined、ティモシー・リスターのAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら、伊豆原 弓
- 出版社: 日経BP社
- 発売日: 2003/12/23
ソフトウェア・エンジニアリングにおけるリスク管理を綴った好著。
基本的な事柄が、とてもよく整理されている。
ただ、冒頭の一言の重要性は決して忘れてはいけない。
「リスクのないプロジェクトには手をつけるな」
リスクのないプロジェクトからは、必ずといっていいほど、何も得るものがない。
ちなみに本書は、個人的には思い出深い1冊になった。まさに読了した日、思いもよらない外部リスク要因で、プロジェクトが停滞したからだ。
これも好著。経営における模倣の重要性を綴った1冊。
模倣というとやや語弊があり、より正確には「リファレンス」ということかなと思う。反面教師としてのリファレンスを含めて、「既にどこかにあるもの」をいかに消化して、自らの置かれた環境にカスタマイズして応用していくか。
ただ一点、素直に思ったことがある。
本書に登場する多くの経営者が成功したのは、模倣のせいじゃない。
他人には模倣できないほどの情熱があったからだ。その先の「モデルの模倣」は、情熱から導かれた必然的帰結にすぎないとさえ思えてしまう。
本質的なポイントは、模倣そのものじゃない。時代を造った模倣者たちに匹敵するだけの熱を、自らが持っているかどうかだ。
本書の中身とは関係ないが、バジリコという出版社があるとは知らなかった。
「本は引くもの、辞書は読むもの」と語る著者が、広辞苑を読み進めながら出会った幾つもの知らない言葉にエッセイを寄せたものなのだけれど、確かに知らない言葉が多々あって興味深い。ただ、本書そのものは辞書ではなく、あくまで本なので、遠慮なく引かせていただいた。エッセイ自体は、さほどでもないかな。
アニメーション作家、押井守による新書。表題に引かれて購入したのだけれど、綴られているのはコミュニケーション論というよりも、国防と原子力に対する私的論考といった感じだった。表題は、やや大きく出すぎている気がするね。
ただ、幾つかの点で、間違いなく本質を突いた発言をしている。
例えば冒頭、こんなことを書いている。
「被災地を尻目に日常に戻ることは、悪いことではない。問題なのは、このレベルの災害を目の前にしてもなお、”国民が同じ体験を共有している”とは言えない状態 ― つまりある種のコミュニケーション不全に陥っているということに、あまりに無自覚であることだ。(中略)まず、我々が前提としてしっかり認識しなければならないのは、そもそも日本人というのは同じ意識を持って暮らすことなど根本的にはできないということだ。」
これは、なかなか言えない。そして、あの日名古屋にいた俺は、どこかでそう思う。東海地区以西の住民にとって、本質的には「体験の共有」は極めて難しいと。共有できないと言いたい訳じゃない。心を痛めていないとか、そういうことじゃない。でも、哀しい事実かもしれないけれど、東海以西という境界は、きっとある。あり得てしまっている。押井さんの主張は、その事実に対する是非じゃない。ただ、「その事実を起点にせよ」というだけだ。そしてそれは、きっと正しいスタンスだ。