Thursday, May 05, 2011

春合宿総括 #1

5月3日(火)・4日(水)
東大ラグビー部春合宿@東大検見川グラウンド。

今シーズンは東大ラグビー部のコーチングスタッフから正式に退いているのだけれど、思うところあって久しぶりに春合宿に参加してきた。3日の午後が大雨だったのは残念だったけれど、4日午後のOB戦だけでなく、その前日の練習/ミーティングを見られたことで、非常に多くの気づきがあった。
長くなるが、忘れないうちに個人的に感じたことを纏めておきたい。
基本的に、学生は一生懸命練習していることを理解した上で、あえて課題点を中心に整理してみたい。

まず、素直な今のチーム力について。
主要メンバーの怪我や、東日本大震災の影響で暫く練習ができなかった点を差し引いても、苦しい状況なのは間違いない。春シーズンも残すところ2ヶ月程度だが、この期間で幾つかの重要な課題を修正することが急務だと感じている。
まずは、接点。ブレイクダウンの圧力が致命的に欠けている。
『ラグビークリニック』最新号の中でエディー・ジョーンズも言っているが、ラグビーにおける接点の70%はラックだ。ショートパスで継続するノーラック・ラグビーを志向するとしても、ラックの基本的スキルは依然として重要で、避けることは出来ない。マイボール/敵ボールを問わず、ラックの練習にもっと取り組む必要があると思う。
その時、何に拘って練習するか。現在のラックの最大の課題は、ラックフェーズに対する「ヒット」が殆どないことだと思う。身体の芯をヒットさせて、クリーンアウトするという基本的な部分が欠落しているように感じる。アーリーコミットは非常に重要なスキルなのだけれど、「アーリー」ばかりが強調されていて、「コミット」が極めて甘い印象だ。(実際には、さほど「アーリー」でさえない、という点も課題だけれど。)
個々のスキルのレベルで重要な点は幾つかあるが、ラックに対して自身がフルコミットできる間合いを身体で覚えること、最も強い姿勢(ボディ・ポジション)を身体で覚えること、コンタクトの瞬間は常にその姿勢を取れるように身体に刷り込むことの3点がメインかなと思う。いずれにしても、身体で習得することが大切だ。
今は、間合いも姿勢もない。間合いについては、「人それぞれ違う」という事実をきちんと認識したい。ボールキャリアーに対するサポートの深さや幅は、それによって当然異なってくる。短い距離/少ないステップで加速できる方が、当然有利なポジションを取れることになる。まずは「強いコミット」に重きを置いた場合、自分がどの間合いで動けば良いのかを覚えることが重要だ。姿勢については、コンタクトの基本姿勢を習得するのは勿論だけれど、動きながら「基本姿勢に戻す」という点にも拘った方がいい。そういった身体の使い方を体得できるようなメニューを組み入れるのも良いかもしれない。

接点を考える上でもう1つ重要なのは、ファーストタックルの精度と圧力だ。これも当然のことだけれど、ファーストタックルが劣勢の局面では、ブレイクダウンでのコンテストはとても難しい。まずは有利な形で倒すことに、もっと拘る必要があるだろう。
例えば、ダブルタックル。昨今はどのチームも意識的にダブルタックルさせているが、タックルフェーズで2人がコミットしながら接点を押し込まれては意味がない。2人入ることが目的ではなくて、ボールキャリアー1人に対して2人でコミットすることで、接点を押し返すことが目的のはずなのに、最終的な接点の決着にチームとして拘っていない。タックルの成立シーンだけを追ってゲームの映像をチェックしてみれば、色々なことが見えてくるはずだ。
今のチームの最大の課題は、最後に1歩踏み込めないこと。これはチーム全体の課題だけれど、個人レベルで改善できる点でもある。いわゆる「追い込み練」を数多くこなすのが、結果的には一番の早道だと、個人的には思うけれど。

接点以外にも課題は様々あるが、もう1点挙げるとすれば、ラグビーの構造をもっと理解することが必要だと思う。例えばBKの観点で言えば、「ラインの深さ」に対する基礎的な理解が不足している。ラインの深さとは、ポジションの深さではなくて、ボールの軌道の深さなのだけれど、シチュエーションに応じたボールの軌道の深さが意識されていない。更に言うと、「自分達にとって理想的なボールの軌道」というイメージが、そもそも固まっていない印象だ。ポジショニングに理由をもって、パスの軌道をコントロールできるようにならないと、BKの攻撃が構成できない。このあたりは、言葉で表現するのが難しいけれど。
FWも同様で、例えば各ポジションの基本的なランニングコースが理解されていない。東大のようにサイズに劣るチームの場合、仕事量を増やすことが決定的に重要なのだけれど、コースを理解していない為に、仕事の機会そのものをロスしている。リーダーが中心となってチームの原則を徹底することが必要だと思う。夏合宿以降では、遅すぎる。ポジショナル・スキルに至る前の段階で、例えばラックからブレイクした際のコース取りや、バッキングアップにおける基本的な考え方等は、ラグビー・プレーヤーとして全員が押さえておくべきものだと思う。

本当に長くなってしまったので、その他は明日以降に改めて書こうかな。