Saturday, May 07, 2011

春合宿総括 #2

昨日に続いて、東大ラグビー部春合宿の総括を。
グラウンド・パフォーマンス以外の部分で感じた点も纏めておきたい。

まずはチーム運営、あるいは組織のあり方について。
東大ラグビー部のようにリソース(選手・コーチ等の人的リソースのみでなく、時間・運営予算等も含む)が限られた組織にとって、効率的な運営は重要なポイントだ。ただ、「効率的」というのも2つの要素があると思っている。1つはいわゆる「選択と集中」で、無駄なことをせずに、有意義な施策にリソースを集中するということ。もう1つは、選択した施策それ自体の意義を高めること。この双方を追いかける必要がある。

例えば、「あった方が良い」というレベルのスキル練習を捨てて、「なくてはならない」スキルの習得だけに特化する、というのが前者の考え方だ。今のチームで言うと、例えば「ブレイクダウンの判断」にフォーカスした練習は捨てるべきかもしれない。昨日書いたように、ブレイクダウン自体の強化をしなければ、判断を要求される状況に持っていくことさえ出来ないからだ。まずは状況を問わず、ブレイクダウンの局面では強くヒットする原則を確立するのが先決だろう。その上で初めて、ヒットの圧力だけではコンテストできない局面というものが見えてくる。この順序を間違えてはいけない。
「守・破・離」という言葉があるが、判断とはある意味では「破」の段階だと言えなくもない。個々のプレーのレベルで考えるならば、「守」とは型の理解で良いからだ。型通りでは上手くいかないという「判断」、あるいは型が前提とする局面ではないという「判断」があって初めて「破」に至るとするならば、まずは「守」を徹底することを優先すべき時期ではないかと思う。
要するに、ブレイクダウンの見極めを意識する前に、筋力・体幹の強化を含めたパワーアップと、身体の芯でヒットするスキルの向上に心血を注ぐべきだ。

後者の観点でいうと、例えばブレイクダウンの強化に具体的に取り組むとして、どのように練習を構成すれば最も多くを得られるか、といった点をもっと突き詰めたい。練習メニューに競争の要素を加えたり、バリエーションを幾つか用意して飽きさせないように工夫することは、今すぐにでも出来る。メンバーのモチベーションも意識して、目的意識の明確な練習運営を心がけることで、もっとチーム運営を良いものにしていけるだろうと感じている。
今回は1泊2日の合宿参加で、計2回しか練習を見ていないので、あまり踏み込んだことは言えないが、その中でも幾つか気になった点がある。
例えば、大雨に見舞われた3日午後に、キックチェースの練習があった。合宿を迎えるにあたって、首脳陣が事前に課題として設定していたポイントではあるのだが、大雨の影響でキック自体が精彩を欠いてしまい、練習の意図が曖昧になってしまった。勿論、雨でも試合は行われるので、無駄な練習だったとは言わない。しかし、悪天候/グラウンド状態といった環境制約のもとで練習するならば、練習の主旨をフレキシブルに修正して、それをメンバーに伝えた上で臨む必要があったと思う。折角チームとして「取り組む」と決めた練習の効率が、練習の運び方次第で大きく損なわれてしまうこともある。意図や目的というのは、最初の設定だけに捉われず、柔軟に見直しをかけていくのが、効率的運営のポイントだと思う。
ちなみに翌4日の午前中は、午後のOB戦に向けて、前日の大雨で水浸しとなってしまったグラウンドの整備に充てられた。本来は短めの練習を予定していたが、この判断自体は仕方ないものだったと思う。それでも、グラウンド整備だけで、部員/OBの全員が常時動きっ放しという程の作業量はなかったような気がする。何人かの選手の手は止まっていて、雑談に興じてしまう姿も散見されていた。
例えば俺だったら、FW/BKでメンバーを分けて、それぞれ15分程度でもボールを使った練習を行ってからグラウンド整備を終了させることを考える。グラウンドの脇に雑草で覆われたエリアがあるので、ミニドリルやグリッドのようなメニューであれば十分可能だったはずだ。
泥だらけのグラウンドで、素足になって水溜りを散らしたりしていると、「このグラウンドで試合するのは嫌だなぁ」と誰だって思う。その心理状態のまま午前を終えて、そのまま試合前のウォーミングアップに合わせてグラウンドに出てきても、アップの効率が落ちてしまう。勿論、それでもきちんと気持ちを作ってくるのが自立した選手だということも出来るけれど、チーム運営という観点でみれば、10分程度でもトップダッシュでボールに触れることで、「午後は闘争だ」という心理状態に持っていくことを首脳陣が中心となって考えても良かったと思う。それで、グラウンド整備が大きく遅滞するというようなことも、実際にはなかったのだから。

これらはあくまで一例で、俺の考えが正解だったかどうかも分からない。ただ、いずれにせよ組織運営の効率を高めることを考えた時に重要なのは、目的意識をもって選択すること、その選択が最大限に活かされる心理状態/モチベーションを意図的に演出すること、そして状況が変化したならば当初の設定を柔軟に変更することの3点ではないかと思う。
今回参加した2日間について厳しい見方をすれば、3点のいずれも十分ではなかったかもしれない。でも、それは今から変えればいい。まずは、もう一度「今」を正視して、腹を据えて「選択」することだ。何をするかが固まってくれば、その後の運営はある程度コントロールしやすくなるはずだし、この点こそコーチング・スタッフが尽力すべきポイントだ。学生首脳陣のみで抱え込まずに、監督・コーチ陣を含めた「東大ラグビー部」という組織全体で取り組んでいけばいい。

俺自身は残念ながらもはや正式なコーチではないけれど、今回感じたことは、もう少し具体的な提言として首脳陣に伝えたいと思っています。今更、立場に引っ込んでいても仕方ないからね。