Monday, September 26, 2011

流れを掴むために

名古屋大学ラグビー部のシーズンが、本日開幕した。
緒戦の相手は、今シーズンからA2リーグに昇格してきた名古屋経済大学。
社会人時代の先輩、肥後さんがヘッドコーチを務めているチームだ。

今シーズン、名古屋大が掲げたチーム目標は『A2リーグ全勝、A1リーグ昇格』。
でも、この日の結果は28-31。
とても残念なことに、緒戦をもって早くも目標の修正を余儀なくされることになった。

スコアが示している通り、チーム力に顕著な差はなかったと思う。
双方共にミスが多くて、お互いに流れに乗り切れないようなゲームだったけれど、大局的に捉えれば、前半(0-17)は完全に名経大のゲーム。後半、風上に立った名古屋大がうまくゲームを運んで3トライを奪い、後半20分までに21-17と引っくり返したのだけれど、ここがゲームの綾だった。自陣10m付近のブロークンな状況から大外展開で持っていこうとした名古屋大が、ミスから流れを失うと、名経大の逆襲を防ぎ切れずに再逆転を許してしまう。21後半ラスト10分を切ってから10点差まで点差が広げられた時点で勝機はほぼ失われ、終了間際に1本返すのが精一杯だった。

ラグビーのレベルを問わず、ゲームには流れというものがある。
手繰り寄せるのも、失うのも、自分達次第。
風下の前半、敵陣で不用意なペナルティを繰り返してしまう。
相手の得意パターンであるインサイド主体の攻撃を、分かっていながら狙い撃ちできない。
我慢の時間帯に、一度は相手のジャージを掴んだ指を、簡単に離してしまう。
0-17は、自分達で招いた当然の展開だった。
それでも後半、風上からキックでエリアを確保すると、FW・BK共に持ち味が生きてくる。敵陣22mライン付近からのモールをFWが押し込んで反撃の狼煙を上げると、今度は敵陣10mあたりからの連続攻撃からBKがラインブレイクして連続トライ。この時点で、名古屋大がすべきことは完全に見えていたはずだった。

後半の残り時間は20分弱。風上で4点差。
名古屋大にとってのスコアへの射程距離は、敵陣10mライン。
スクラムは劣勢だが、FWのモールは計算できる。
ブレイクダウンでのボールへのプレッシャーは決して強くない。
執拗な絡みもないので、孤立しなければボールはリサイクルできる。ロストの大半はミスだ。
相手は自陣からでも展開してくるチーム。キックのオプションは少ない。名古屋大のキックに対しても積極的にカウンターを仕掛けてくる。でも、CTBの戻りは早くない。

これだけの条件が揃って、チームが何を選択するか。
ここがゲームの分岐点。そして、この日の名古屋大が流れを失ったのが、まさにここだった。

確かにチャンスはあった。
それは間違いなく事実で、積極的に展開しようという意志を否定するつもりもない。
それでも、チームの状況とゲーム全体の流れを見れば、考えるポイントは他にあったんだ。
4点差というのが、自分達にとってどの程度のアドバンテージなのか。
そこにあるチャンスフェーズは、スコアのチャンスなのか、 10mゲインのチャンスなのか。
その時間帯、その局面において、相手は何を考えているのか。

そういったことを、もっと考え抜かないといけない。
もっと思考して、それを身体で表現できるように。
リーダーの思考を、15人のパフォーマンスにすっと落とし込めるように。
こんなところで、つまらない試合をしていては勿体ない。
何よりも、自分達がこれまでにグラウンドで費やしてきた時間がね。

チームは緒戦から苦境に立ってしまったけれど、もう終わったゲーム。過去は取り戻せない。
次のゲームから、チームを立て直すしかない。そして、そのためにすべきことは1つしかない。
そう、練習を変えていくしかないんです。頭も身体も、常に全力を投じて。

Thursday, September 22, 2011

惜しまれる一戦。

ラグビーW杯、予選プールA
日本 18-31 トンガ

ジャパンのことは心から応援しているけれど、正直、観ていて辛いゲームだった。
ラグビーを愛する多くのファンが、同じような思いを抱いたのではないかと思う。

出来ることならば、もっとジャパンの強みを生かした戦い方をしてほしかった。JSportsで現地リポートをされていた村上晃一さんの言葉にもあったように、この日のジャパンは「慎重さ」をやや欠いていた。不利なエリアで不用意なアタックをして、小さなミスから必要のない失点を重ねてしまう展開。素直な印象で言うならば、典型的な負けパターンに嵌まり込んでしまっていた。一方のトンガは、ジャパンが露呈した小さな隙を逃すことなく、エリアとポゼッションを確実に奪うと、SOモラスの正確なゴールキックから着実にスコアを重ねていった。そう、小さな隙。それは例えば大事な局面でのハンドリングエラーや自陣でのペナルティ、あるいは幾つかの局面におけるプレー選択のミスだったりするのだけれど、1つひとつの小さな隙が致命傷になってしまうのが、W杯の怖さなのかもしれない。

勿論、トンガの勝因はそれだけではない。最大の要因は、言うまでもなくブレイクダウンだろう。80分間に渡っての執拗なプレッシャーは圧巻だった。 ポイントに対する寄りが全般的に遅れ気味だったジャパンは、トンガのパワフルなヒットとボールに絡みつく圧力に、終始苦しめられた。ジャパンとしては、ここまで劣勢に立たされるとは正直思っていなかったのではないかという気がする。あのブレイクダウンへの徹底的な拘りは、トンガを讃えるべきかなと思う。

ジャパンの戦術であったり、ゲームマネジメントについては、W杯終了を待つことなく、色々な人が、色々なことを言うだろう。間違いなく批判の矛先が向かいそうなポイントも、現時点である程度まで想像できる。そしてそれは、勝負の世界では仕方のないことだとも思う。
でも今は、残されたカナダ戦のために、全てを捧げて集中していってほしい。
W杯という舞台のためにジャパンが捧げたこの4年間の全てを賭けて、最後にジャパンのベストバウトをしてもらいたいと、心から願っている。
トンガ戦は惜しまれるゲームだったけれど、もはや過去でしかないのだから。

ちなみに、トンガ戦で最も心に響いたのは、やはりマイケル・リーチの姿。
本当に素晴らしかった。まさに獅子奮迅の活躍。彼はこのW杯における全ての瞬間で、魂を感じさせるプレーを続けているね。今のジャパンで、個人的には最も好きな選手です。
そして堀江、畠山というフロントローの2人も素晴らしかった。リーチを含めて、この3人のプレーには特に惹かれるものがあった。興味深いのは、リーチや堀江が持ち込んだボールをターンオーバーされるケースは極めて少ないということ。例えばアリシ・トゥプアイレイや遠藤に代表されるようなフィジカルの強いタイプの選手と比較しても、ボールの活かし方は秀でていると思う。これは、ジャパンの活路を考える際のヒントになるのではないかと、個人的には思っている。トンガのようなタイトなプレーの得意なチームに対しても、身体を柔らかく使ってボディ・ポジションをコントロールしたり、ターンのようなヒットの芯をずらすようなプレーは有効に機能していて、狭いスペースを上手にドライブで抉じ開けたシーンというのは、局所的に見れば大半がこういった「柔らかさ」に起因していたと思う。「柔よく剛を制す」と言ってしまうと少々誤解を招くかもしれないけれど、ジャパン、ひいてはフィジカルでの劣勢に向き合っていかざるを得ない多くのラグビーチームにとって、目指すべき1つの形ではないだろうか。

Sunday, September 04, 2011

My Problem

9/2-3と社内タスク@小田原に参加してきた。
要するに、現在の会社の課題について若手メンバーで議論を重ねて、それを改善するための施策提言を経営層に対して行うというもので、4月以降、約半年間に渡ってチームでの活動を継続してきた。通常業務を抱える中で、タスクの活動はそれなりに重かったけれど、日頃はさほど意識することのない課題について、バックグラウンドの異なる様々な人達と議論するのは、個人的には結構楽しかった。
この2日間は、各チームで纏められた施策の発表と、川本裕子さんによるゲストスピーチがメインだったのだけれど、自分自身にとっては本当に多くの気づきがあり、とても良い経験だったかなと思っている。また、様々な方との懇親の機会を得られたのも良かった。

まず、初めて英語で15分間のプレゼンテーションをした。
自身の英語力はまあ仕方ないとして、改めて強く思ったことがある。
英語でのプレゼンにおいて、最も大切なのは英語じゃない。
遥かに重要なのはコンテンツそのものであり、その表現(プレゼンテーション技術)だ。
勿論、表現において英語の巧拙が決定的だったりもするのだけれど、その際に重要なのも、きっと正確な発音、正確な構文じゃない。それ以上に重要なのは、例えば意図された抑揚であり、ブレスであり、間だ。(決して発音や文法的な正確さが不要だというつもりもなくて、Priorityの問題だとは思うけれど。)
これは素直な実感なのだけれど、とても勉強になった。

コンテンツには、思いはあったんだ。少なくとも、自分にとってはね。
でもきっと、あまり受けていなかったと思う。それも、1つの大きな気づきだった。
今回のタスク活動を続けてきて、明確に自覚できたことがある。それは、今、自分の関心が「人間そのもの」に向かいつつある、ということ。例えば、モチベーション。誰かの心に火をつけるのは、本当に難しい。でも、ほんの小さなことがきっかけで、人のモチベーションは一瞬にして毀損したりする。自信や信頼なんかも同じだ。本物の自信、本物の信頼というのは、簡単じゃない。本物の自信を待っていたら、人はいつまで経っても1歩目を踏めない。挑戦はいつだって、自信そのものを追いかけるようなものだからね。

みんな言うんです。挑戦しようぜ。信頼関係で仕事しようぜ、って。
でもそれは、2日目のゲストスピーカーだった川本裕子さんの言葉を借りれば、「反論されない」ものなんだ。挑戦することの価値は、誰も否定しない。信頼関係はあった方が良いに決まっている。問題は、そのことを分かっていながら、誰もが臆することなく挑戦する訳でもなければ、お互いを信頼して仕事をできる訳でもない、ということだ。そして、挑戦を強制されると、往々にして「できること」だけをオープンにするのが人間の性だということだ。

そう、人間の性。ここから逃げちゃいけない。
そういうことを伝えたかったのだけれど、力量不足だったかな。
でも勿論、今度は自分自身が逃げちゃいけないよね。
社長の英語の質問をよく理解せずに完全にスルーしたという程度のミスは、自分の中で早々に帳消しにして、もっと考え抜いてみようと思います。

これも、川本さんが講演の中で言っていた。
課題というのは、課題と認識された時に初めて課題になるのだと。
つまり、自分の課題認識から逃げてしまったら、それは課題でさえなくなってしまうんです。