Sunday, May 13, 2012

本質から本質に向かう発想


早稲田大学中沢塾の「リーダーシップ工学」




  • 作者: 中沢 弘、undefined、中沢 弘のAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら

  • 出版社: 講談社 (2002/10)

  • 発売日: 2002/10


早稲田大学名誉教授で、エンジニアのためのリーダーシップ教育「中沢塾」を主催されている中沢弘さんの著作。「リーダーシップ工学」という表題の通り、従来は文系的なアプローチで語られてきたリーダーシップというものを、工学的手法をベースに再定義すると共に、そのあり方と具体的方法論に踏み込んだ内容で、非常に面白かった。エンジニアではないけれど、エンジニアと共に日々仕事をしていることもあって、アプローチ自体も非常に馴染みやすいものだった。

やはりコアとなるのは「メタコンセプト発想法」、そして「トータル設計」だ。これに「人間中心(Human-Oriented)」を加えると、ほぼ中沢さんの骨子になってくる。
メタコンセプト発想法とは、ある課題に対して、同一レベルでの対症療法的な解決を考えるのではなく、その課題の背景にある真の目的(メタコンセプト)を導出して、それに対するアイデアを幅広く出していくアプローチだ。これは非常に有益で、日常的にメタレベルで考える癖をつけていくのは、とても大切なことだと思う。勿論、簡単なことではないけれど。
トータル設計とは、何か新たな機能的要求が与えられた時に、既存システムをベースとした一部修正や機能追加で対応する(付加設計)のでも、既存の複数システムを組み合わせて新たな機能要求を充足する(組み合わせ設計)のでも、また機能的要求は一切変更せずに、更なる最適化だけを目指す(改良設計)でもなくて、(従来の機能要求も併せて)全てをゼロベースで考えて、全体最適化を目指すアプローチだ。これも非常に大切な考え方だと思う。エンジニアリングの本来の醍醐味というのは、こういうところにあるのだろう。(俺自身は、残念ながらエンジニアではないけれど。)

多くの場合、既存リソースという制約に縛られた対症療法的な発想に基づいて、既存リソースという制約の中で実現できる対症療法的な設計を行うんだよね。そしてそれは、リソースへの投資を行うのがお客様であるという点で、ある意味では仕方ないことでもあって。トータル設計の価値をお客様に認めていただき、リソースへの投資、そして(リスクを含めた)チャレンジの価値と意義を合意できなければ、青写真はいつまで経っても青写真のままなのだから。
でも、一方で、やはりそうじゃない、という心意気は持ち続けたい。
そういう発想のベースを、自分自身の中にきちんと根付かせていきたい。
日々の仕事で頭をフル稼働できているかというと、まだ足りないところが多いなあと(ちょうど今日なんかも)思うのだけれど、フル稼働させる時のスタート地点と、目指すゴールをどうセットするか。

いつだって、本質から考える。
本質の方向に向かって、考える。
まあそういうことなのかなと、思います。難しいけど。