Sunday, February 12, 2006

感動について

パートナーと一緒に上野に出掛ける。
彼女が勤める画廊のオーナーに薦められて向かったのは、東京国立博物館で開催されている『書の至宝展』だ。王羲之に始まり、聖徳太子、空海、良寛といった書家の作品が多数展示されており、平日でも大勢が列を成していると聞いていたので、少し早めの時間から出掛けることにした。

正直に言うと、書には全く興味がなかったんだ。
彼女が無料招待券を持っていなかったら、間違いなく行かなかった。
それでも、足りない自分の分のチケットを買って一緒に観ようと思ったのは、もしかすると新たな発見があるかもしれないと思ったから、ではなくて、単純に彼女にひとりで行かせるのは可哀想かなと思ったからだった。

それで感想はというと、残念ながらつまらなかった。
ただ、必ずしも展示された書がつまらなかったという訳ではないんだ。
正確に言うと、つまらなかったのかどうかすらもよく分からない。
というのは、実は殆ど作品が見えなかったんだよね。人混みに囲まれてしまって。

誰もがお金を払って観に来ているのだから、じっくり鑑賞したい気持ちは分かる。
それでも、この展覧会の人混みは異常だったと思う。
あれほど混んでいるのに、誰も先に進もうとしない。他の人間のことを誰も考えない。それに加えて、大多数の作品が目線よりも低い位置に展示されているので、間近を取り囲んでいる人間にしか作品が届かない。甲骨文字のような、少なくともおれからすれば、繁々と見るようなものではないと思ってしまうものの前にさえ、二重三重に人が連なっていたのだから、王羲之や空海など殆ど観られたものではなかった。

ああなってしまうと、もう駄目だね。心が閉じてしまう。
「日々是感動」こそがスタートだったはずなのに、その想いとは正反対だよね。
展示されていた多くの作品に対する印象が、ほとんど皆無です。
もう一度、静かな部屋で観ることが出来たら違うのかも知れないけれど。


その後は、西洋美術館の中にある「すいれん」でランチを食べて、上野の街を適当に散策して歩き、みはしで餡蜜を食べて帰ってきた。みはしの餡蜜は美味しいけれど、杏餡蜜は酸味がちょっと強いので、あまりお薦めじゃないね。


夕方。
自宅に戻ってまず珈琲を入れると、録画してあったVHSのビデオテープを巻き戻す。
録画したのはもちろん、ラグビー日本選手権大会の2回戦。
早稲田大学 vs トヨタ自動車(14:00K.O. @秩父宮ラグビー場)

実際に観に行った人も多いと思う。注目されたゲームだったからね。
結果は早稲田 28-24 トヨタ自動車。学生による18年振りの社会人撃破となった。

試合の詳細には敢えて触れないけれど、素晴らしいゲームだった。
スコアを見れば苦しみながら捥ぎ取った勝利だけれど、早稲田は勝つべくして勝ったように見えた。彼等は周到な準備を重ね、戦略と意志統一を徹底し、目標を最後まで忘れなかった。あのチームが、次のシーズンのタマリバの目標になるんだね。

最後に、この試合を観て思い出されたイチロー選手の言葉と、学生時代にラグビーを通じて知り合ったある方がくれたメールを、ここに書いておきます。


特別なことをするために特別なことをするのではない。
特別なことをするために普段どおりの当たり前のことをする。

三年前、学生王者が社会人に勝つと思った人がいただろうか。でも彼らは本気で信じ続けた。正直今はクラブチームが勝つと思ってる人はいない。でも目標を持ち続けることで真実は覆る。来年の健闘を祈る!