Monday, October 23, 2006

誰も知らない

柳楽優弥少年がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したことで話題となった、是枝裕和監督の映画『誰も知らない』をDVDで観た。

ありきたりな感想になってしまうけれど、切ない映画だった。
「情」に飢え、渇望する4人の子供達の姿が痛ましく、そして切ない。
親の愛情、仲間の友情、街の人情。情にも様々な形があると思うけれど、最も身近な存在であるはずの母親の愛情が、ニグレクトによって奪われてしまった4人の子供達は、決定的に情に飢えていた。
彼らが降り注がれる情にもっと恵まれていたならば、と思う。
ラストカットにささやかな希望の一端が垣間見えるのかもしれないけれど。

それから。
この映画も観ていて、もうひとつ感じたことがある。
それは、とても写真的だということ。
静かに流れるスライドショーに、物語を載せたような印象だった。
ひとつひとつのカットの構図と対象の配置、或いはフレームに注がれる光と画面の色調、そういった様々な要素が極めて写真に近いと感じた。繊細で美しいカットが幾つもあって、そのやさしさが物語の切なさと相まって、独特の作品世界を創り出していた。写真もそうだけれど、すべてのベースは光なのだなあと、映像に魅入りながら、光の美しさに思った。