村上龍さんの小説『ラブ&ポップ』読了。
龍さんの小説を読むのは久しぶりだったけれど、相変わらず素晴らしかった。
援助交際を扱った小説で、発表当時はセンセーショナルな作品として話題になったような記憶がある。庵野秀明監督作品として映画化もされていて、龍さんの数多い著作のなかでも認知度の特に高い作品のひとつではないかと思うけれど、そういったことではなくて、この作品は純粋に魅力的であり、繊細で瑞々しく、丁寧で構成力に富んでいて、つまりは単純に良い小説だった。
自分が高校生の頃は、どうだっただろう。
がちがちに頭が固くて、意固地で、青くて、今以上に何も知らなくて、この小説に登場する4人の女子高生たちのような繊細で研ぎ澄まされた感性に対する眼差しは持っていなかったのだろうと思う。ラグビー部の仲間と過ごす毎日が楽しくて、ただそのことばかりを考えていたからね。
同じ制服を着て、似たような化粧と髪型で街を歩く女子高生の集団を眺めているうちに、「女子高生」という言葉だけでは語れない多様な感性が、ひとつの象徴的なイメージとなって自分の中で固定化され、収斂されていく。それはきっと、殆ど全ての人間にとって、ある程度は避けられない無自覚的な意識の作用なのだと思うけれど、それだけでは、やっぱりどこか寂しい。例えばこの小説に描かれた4人の女子高生の瑞々しさやデリカシー、自分を取り囲む世界への眼差しのようなものを、勝手な解釈で一般化して、固定的な概念に埋没させてしまうのは、想像力の怠慢だよね。結局は、自分自身の無自覚的な認識に対して、はっきりと自覚的に、意識的に抗い続けていくしかないのだと思う。
村上龍さんという人はたぶん、ずっとそうして日々を生きているんだろう。