Saturday, October 21, 2006

空中庭園

角田光代さんの小説が原作の映画『空中庭園』を観た。
つい最近、小説を読み終えた後輩が連絡をくれたのをきっかけに、どうしても観たくなって。ちょうど今の気分にもマッチしていたからね。

原作となった小説『空中庭園』が、おれはとても好きだ。
この小説のよさは、距離感と温度。京橋家というひとつの家族を構成する人間たちの距離感と、そこに見えたり隠れたり、あるいは隠し切れなかったりする心の温度が、とても丁寧に描かれている。とてもやさしい小説だと思う。

それで、映画について。
おれ個人の感想としては、映像が語り過ぎている気がするかな。制作者側の意図が透けてみえてしまう部分が、逆にノイズになっているように感じた。それでも小泉今日子、鈴木杏、大楠道代といった女優が肝となるシーンを見事に演じ切っていることで、特に後段は見応えのある作品になっていると思う。
作品のなかに登場するコウという少年がおれは好きで、映画の中での描かれ方に期待を持っていたのだけれど、若干イメージが違ったのは残念だった。もう少し乾いた雰囲気があって、モノクロームの写真のようなイメージだったんだけどね。ミーナから建築物の写真を大量に譲り受けるシーンがなかったのも、ちょっと残念だった。映画全体の中では脇のストーリーかもしれないけれど、コウの建築物への志向のなかに、彼のやさしさと切なさが垣間見えるような、そんな印象を持っていたからね。

もういちど、小説読み返してみようかな。