Friday, September 27, 2019

RWC 2019 日本vsアイルランド - 私的プレビュー








戦法に絶対はない。だが、絶対を信じない者は敗北する。
大西鐵之祐(元ラグビー日本代表監督、1916-1995)

ジャイアント・キリングとはもう言わせない。
でも、アップセットへの挑戦であることには変わりない。
明日はそういう戦いになります。9/28(土)日本vsアイルランド@エコパスタジアム(静岡)、運命のキックオフは16:15です。

今週時点のWorld Rugby RankingではABsに首位を譲ったものの、依然として世界No.2を誇るアイルランドの強さは本物です。ジャパンにとっては、今大会(RWC 2019)の運命を左右する最大の難所といっても過言ではありません。結果はもちろん重要。勝敗のみでなく、ボーナスポイントの有無も今後の展開に大きく影響してきます。でも、そういう諸々の前に、今にフォーカスするしかない。最終戦のスコットランド戦を考える前に、今この瞬間に全力を捧げて、全員が出し切るプロセス(All Out)を共有することでしか生まれない結束を勝ち取らない限り、明日を描くことはできない。W杯とは、そういう場所です。

何よりも最初に知っておきたい、アイルランドのこと ー

ところで、RWC 2019の参加チームはいくつかご存知ですか。20の「国・地域」です。20ヶ国ではない。その象徴たる存在が、実はアイルランドです。
アイルランド独立戦争(1919-1922)を経て連合王国(*)の一部として残った北部アルスター6州とアイルランド共和国とに分断され、その後も紛争の続いたアイルランドは、南北関係において極めて複雑な政治的背景を抱えています。でも、そうした中でラグビーは南北の垣根を超えた存在としてあり続けた歴史があります。独立戦争終結前に設立されていたIRFU(アイルランドラグビー協会)は、分断後の国境を無視し、統一チームとして戦い続ける道を選びます。

明日、ジャパンが戦うチームというのは、そういうチームです。アイルランド共和国代表ではなく、「1つのアイルランド」の誇りを胸に結束した男達です。試合前の"国歌"斉唱で歌われるのは、国歌ではなく”Ireland's Call"。「1つのアイルランド代表」のために作られた特別な歌です。静岡の地に"Ireland's Call"が響き渡るというそれだけで、もう感動を抑えられません。

で、肝心の見どころは ー
全てです。とにかく"Ireland's Call"から見てください。

ジャパンの勝機はどこに ー
アイルランドのような格上の強豪と戦う際には、幾つかの鉄則があります。
まずは、ロースコアの戦いに持ち込むことです。アイルランドは、初戦でスコットランドをほぼ完璧に封じ込めています。135本のタックルに対して、ミスタックルはわずかに8本。94%を超える驚異のタックル成功率です。つまり、簡単にはスコアできない。イメージとしては、20点のラインで争わない限り勝機はないと思います。では、どうするか。最も重要なのは、相手ボールの時間を減らすこと(Possession)、そして敵陣でプレーすること(Territory)の2つになってきます。この2つは全てのゲームで重要な指標ですが、格上を相手に主導権を取るのは容易ではありません。当たり前のことを当たり前にできるのが、本当に強いチームなんです。ジャパンはまず、ここに挑むことになります。

もう1つは、小さくてもいいのでスコアで先行すること。4年前の南ア(ブライトンの奇跡)とは違います。相手は開催国でもあるジャパンをきちんと警戒しています。小さくてもスコアでアドバンテージを取って、相手が追う展開に持っていくのが理想です。そして後半20分頃にまだリードを保っているか、少なくとも均衡状態を守れていれば、その時初めてアイルランドは背中に崖っぷちを見ることになります。

改めて、注目選手は ー
ウィリアム・トゥポウ、そしてトモさんことトンプソン・ルークの2人は大丈夫ですよね。この試合ではもう1人、FBに入った山中亮平を挙げておきたいです。前回の2015年W杯では、開幕直前に代表を外されるという悲運を経験するも、見事に這い上がってきた天才。いや、天才と言ってしまうと本当は失礼なのかもしれません。それだけの時間を積み上げてきた1人なのだと思います。
ダイナミックなランと、距離のあるキック。パスの能力も高いです。一方で、ロースコアの戦いとは"Aggressiveness"だけではないので、この部分をチームの最後尾からどのようにオーガナイズできるかが、明日の生命線になってきます。


また長くなりましたが、明日が待ち遠しくて仕方ないですね。

(*) グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国