Monday, January 09, 2012

『坂の上の坂』

藤原和博著『坂の上の坂』(ポプラ社)

いい本です。
藤原和博さんの過去の著作を読んでいると、重複感が否めない点もあるけれど、それでもやはりお勧めできる1冊かなと。

昔は、定年まで必死に働いて、坂を上るその視線の先には見上げる雲があった。
雲とはつまり、ロマン。平均寿命も現代の半分程度だった『坂の上の雲』の時代、人は雲を見上げながら死を迎えることができた。
今は、違う。60歳で定年を迎えても、その先に20年、30年という老後が待っている。
そこにあるのは、見上げる雲ではなくて、新たな坂ではないか。
それは上り坂かもしれないし、下り坂かもしれない。
でも坂と向き合っていく準備は、これからの時代では絶対に必要ではないか。
そんな問題意識に沿って、本書は綴られている。
想定されているメインターゲットは、30代~40代のビジネスパーソン(特に男性)だ。
勿論、それ以外の年齢層でも、あるいは女性でも、きっと面白く読めると思う。
個人的には、配偶者と一緒に読むのがお勧めだ。
そんな訳で、パートナーにも読んでもらいたいなあと思っている。

会社、あるいは仕事は、人生の極めて大きな部分を占めている。
その事実を明確に認めた上で、でも会社は人生を託す場所ではないと悟る。
人生の豊穣とは、もっと「生活」の中にあるからだ。
ただ、会社員という存在そのものを、単純に「組織の奴隷」と切り捨てたりはしない。
そうではなくて、会社に寄りかからない人生を、選択的に生きる、という感じかなと。
そういう思考の展開はとても丁寧だと、個人的には感じます。

率直に言うと、藤原和博さんの考え方には、非常に共鳴する点が多い。
適切な表現かどうか分からないけれど、俺にとって藤原さんは、ひそかな「ロールモデル」とでも言うような存在になっている。もちろん、俺は藤原さんではないので、同じことは出来ないし、するつもりもないのだけれど、どこかで追いかけている自分がいるんです。