Wednesday, September 28, 2005

空が近くなる

9月23日から26日までの4日間にかけて、パートナーを連れて北海道にいた。
11月3日に秩父宮ラグビー場で行われる東日本クラブトップリーグ決勝。個人的にも、実に4年振りとなる秩父宮への切符を賭けたゲームが、札幌の月寒ラグビー場で組まれていたんだ。相手は、昨年度3位の北海道バーバリアンズ。春の八幡平遠征に次いで、今回が2度目の遠征となったのだけれど、まさか公式戦が北海道で開催されることになるとは、タマリバに加入する時には思ってもいなかった。でも、26日は休暇を取って4連休にした上で、パートナーを連れた3泊4日のツアーを組むことが出来たので、結果的にはとても良い機会になった。


9月25日(日) vs北海道バーバリアンズ(12:00 K.O.@月寒ラグビー場)

結果はというと、34-21の辛勝。際どいゲームだった。
10-18とリードされた状態で前半を折り返したことからも分かる通り、思うように自分達のラグビーが出来なかった。北海道バーバリアンズのメンバーには、4人の外国人選手が名を連ねていたのだけれど、密集での彼らの執拗なプレーシャーによって、特に前半の40分は、完全にペースを狂わされてしまった。後半に入ると運動量とプレーの精度で相手を上回ってきて、流れを手繰り寄せることが出来たけれど、全体的には反省材料の多いゲームだったね。
ただ、個人的な出来は、それほど悪くなかったかもしれない。なにより、春からずっとチームの課題として取り組んでいる「ダブルタックル」の意識を、ゲームの中である程度プレーに落とし込むことが出来たような気がする。昨年までの社会人ラグビーでは、基本中の基本にあたるプレーだと思うけれど、それを組織防御として体系化することは、チームとしてきちんと練習に取り組まないと、非常に難しいからね。

まあとにかく、勝ってよかった。次は11月3日、4年振りの秩父宮ラグビー場だね。


さて、ここから話は別の話題へと移っていく。
試合翌日の26日、パートナーを連れて、ずっと行きたかった場所を訪れたんだ。
昨日も少しだけ書いたけれど、彫刻家イサム・ノグチによる構想・設計のもと、20年近い歳月を経て、2005年7月1日にようやくオープンした、札幌のモエレ沼公園。
"http://www.sapporo-park.or.jp/moere/"

イサム・ノグチの彫刻が、おれは好きだ。
決して多くの作品を知っている訳ではないけれど、彼の彫刻は、どの作品もスマートで、丁寧で、きりっとしている。どの作品も、どこか優しい感じがする。そしてどの作品も、掛け値なしに美しいものばかりだ。
モエレ沼公園は、そのイサム・ノグチによって設計された「彫刻」としての公園。
ありきたりの表現だけれど、公園にして「彫刻」なんだ。

素晴らしかった。
189haという広大な敷地のすべてが綿密にデザインされ、最も美しい組み合わせで配置されているような、そんな公園だった。イサム・ノグチという彫刻家のことが、また改めて好きになった。
広大な公園を彩る様々なオブジェや施設、小高い丘やカラマツの林。
それらは、それ自身が既に彫刻的な美しさを持ち併せながら、それらが全体として織り成す遠景が公園全体をひとつの作品へと昇華していくように、絶妙な構成で公園に組み込まれていた。

広大な公園のなかをゆっくり歩く。そこにはどこか、角度を変えながら、様々な方向から彫刻を眺めるような、そんな感じさえする。見る方向によって彫刻の味わいが異なるように、そして、素晴らしい彫刻はどの方向から見ても素晴らしいのと同じように、モエレ沼公園は、自分の立つ場所を変えれば別の趣きがあり、そしてどの方向から眺めても、その遠景は息を飲むほど綺麗だ。

そして、もっと単純な素晴らしさもある。
例えば、芝生の緑の美しさ。そこにある空気の透明感。広さ、そして楽しさ。
それは必ずしもモエレ沼公園に限ったことではなく、北海道という土地の性格もあるかもしれないけれど、そうした土地柄が最大限に生かされたデザインになっている、ということは言えるかもしれない。それにしても、こうしたプリミティブな美しさというのは、ちょっと東京では成立し得ないものだと思う。

イサム・ノグチの設計図にはきっと、そこに生きる人間の姿もあったんだね。
モエレ沼公園は、そんなことを思わせるような魅力でいっぱいだった。


「モエレ山」と呼ばれる標高62mの山が公園内にあるのだけれど、このモエレ山を登っていって、中腹辺りに差し掛かった時に、前を歩いていたおっさんが言ったんだ。
「空が近くなってきた」

なぜだか嬉しくなったよ。
その感覚こそが、きっとこの公園の命とも言えるものなんだ。