Saturday, September 09, 2006

ふまじめなやさしさ

昨日ちらっと書いたアラーキーこと荒木経惟さんの写真集のことを書いておきたい。
『さっちん』
タイトルの通り、さっちんという少年を撮った写真集。
第1回太陽賞受賞作「さっちん」を一部含めて再編集したものだそうだ。

とにかく見てみてほしい。本当に素晴らしい作品ばかりだ。
パワフルで、生き生きしていて、エネルギーが満ち溢れていて。生きた少年の匂いがつまっているじゃないか。その瑞々しい感性が、写真から飛び出してきそうだ。
それだけじゃない。
さっちんという1人の少年に向けられた眼差しに込められた、そのやさしさ。人間性や生きることへの全肯定の眼差しが、びしびしと伝わってくるんだ。

荒木経惟さんという写真家のことを、おれは尊敬してやまない。
本当にやさしい人なのだと思う。子供だけじゃない。ソープ嬢を撮っても、裸の妊婦を撮っても、疲れたサラリーマンを撮っても、エキゾチックに、刺激的に撮られた作品であったとしても、アラーキーの写真は、やっぱりどこかやさしい。
そのことをおれは、「ふまじめなやさしさ」と呼んでいる。
アラーキーの写真には、ふまじめなやさしさが溢れているね。
そのやさしさもふまじめさも、おれは大好きだし、本当に素晴らしいと思います。

最後に、心に残ったあとがきの言葉を引用しておきたい。

『生きるっていうのはね、やっぱり、跳ねるとか、ヴィヴィッドであるとか、声が大きいとかってことだから。少年たちがさ、フレームから画面からはみ出てるでしょう、飛び出てるでしょう、そういうことなんだよね。』
(『のぶちんが「さっちん」を語る―あとがきにかえて』より)