Saturday, September 16, 2006

『瞬間の記憶』

いつものようにラグビーの練習を終えた後、映画を観に行った。
『アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶』
http://www.longride.jp/hcb/
ロバート・キャパらと共にフォト・ジャーナリスト集団「マグナム・フォト」を創設したメンバーであり、20世紀を代表する天才写真家のひとりであるアンリ・カルティエ=ブレッソンが、自らの写真を語ったドキュメンタリーだ。

素晴らしかった。
いや、むしろ現在形で書いた方がしっくりくるかもしれない。
素晴らしい。
スクリーンに映し出される写真のひとつひとつが、すべてにおいて狂いなく、乱れなく、完全に構成されている。ほんのわずかな瞬間にしか表出することのない世界、それは裏返せば、その瞬間には確かに存在していた世界の姿であって、ブレッソンによって切り取られたその「瞬間」の姿は、観る人間の心の中に様々な「響き」を残していく。響きを静謐のなかに確かなダイナミズムが息づいていて、その美しいイメージは、まだ頭を離れない。

様々な写真のなかでも、特にポートレートの数々には改めて心を奪われた。
デュシャン、マン・レイ、カミュ、トルーマン・カポーティ、サルトルといった蒼々たる人間たちの持つ本質的な魅力、ふとした表情のなかにこそ浮かび上がってくるようなものが見事なまでに捉えられていて、どれも素晴らしかったのだけれど、敢えて特筆するとすれば、マリリン・モンローのポートレート。うまく言葉にできないけれど、スクリーンの世界とは違ったマリリン・モンローの魅力、隠すことの出来ないオーラのようなものが、その1枚に確かに閉じ込められていた。マリリン・モンローという人は紛れもなく「スター」だったのだなあと、その美しさに感動してしまった。

観てよかった。
同時代の空気を吸ってみたかったと、ちょっとだけ思ってしまったけれど。


『写真は、短刀の一刺し。絵画は瞑想だ。』
アンリ・カルティエ=ブレッソン