Wednesday, October 02, 2019

『国境を越えたスクラム』



今回のW杯に合わせて、ラグビー関連書籍が空前の出版ラッシュに沸いている。私は大型書店に足を運ぶと必ずスポーツ棚をチェックするのだが、ラグビーの新刊が続々と増えていくのを目にする度にいつも嬉しい気持ちになり、そして何かしら買って帰っている。本格的なノンフィクションに限らず、いわゆる入門書の類もチェックは怠らない。自分では知っているつもりのことでも、簡潔に整理されたものを読んでいるうちに、ふとした気づきが生まれることもあるものだ。

そんな訳で、とにかくラグビー本はここ最近で急増しているのだけれど、その中でも特に素晴らしいのが本書だ。HONZでも取り上げられるとは思っていなかったが、それだけの価値は十分にあると断言できる。本書を手に取る理由が目下のW杯に乗じた話題性だったとしても、読後感として残るものは間違いなく、「単なるW杯ブームの彩りの1つ」というレベルを超越したものになっているはずだ。

本書で紹介されている多くのエピソードは、長らく日本ラグビーを応援してきたファンでさえも知らないものが少なくないだろう。まさに今、W杯を戦っているジャパンにおいても外国出身選手の存在は非常に大きいが、ここに至るまでには歴史の蓄積があり、野茂や中田英寿ではないかもしれないけれど、同じように「日本という未踏の地」を切り開いてきた先人の存在がある。本書でも冒頭に登場するノフォムリラトゥは今でも語り継がれる伝説的な存在だが、彼らはただ自身の未来のためだけに戦っていた訳ではなかった。パイオニアとしてのプライドと誇りを胸に日本で戦い、そしていつしか彼らの誇りは、「日本代表としての誇り」へと昇華していった。

俺が最も感銘を受けたのはホラニ龍コリニアシの物語だ。コリーの愛称で親しまれたパワフルなNo.8。彼が日本への帰化を決断した際、高校生で初めて日本に留学してきた頃からお世話になっていたある方のもとを訪れて、帰化することを伝えると共に、「龍」の一字を受けることになる。コリーが何を思い、何を背負ってきたのか。詳しくは本書を読んでもらいたいが、電車の中では到底読めないエピソードだ。

ラグビーの大きな魅力の1つが多様性にあるのは疑う余地もない。
ただ、例えば日本ラグビーを、そして今のジャパンを支える外国出身選手たちは、おそらく「多様性のために」ラグビーをしている訳ではないはずだ。日本という地で必死にラグビーに挑んできた結果が認められ、ジャパンに選出された時、そこには多様性があったというだけで。

どこの生まれだろうと、国籍や育ってきた環境がどうであろうと、同じ時代、同じ場所でラグビーに本気になった仲間がいた。ラグビーを通じて、人として繋がった。打算などでは到底越えられない壁がきっとあり、でも仲間の信頼と自分自身へのプライドが、いつだって彼らを奮い立たせた。きっと、ライブではそんな感覚だったんじゃないかと思う。いや、俺としてはそう確信している。

何故ならば、俺がラグビーを続ける理由も同じだからだ。