Wednesday, August 08, 2012

『アフリカの奇跡』



ケニアでマカダミアナッツ工場を起業・経営して、マカダミアナッツ業界で世界5位、年商約30億円を誇るアフリカ有数の食品加工メーカーに育て上げた日本人がいる。
小石川高校ラグビー部出身。10歳の頃に左目を失明していた隻眼ラガーマンは、まさしく魂の赴くままに、日本を取り囲む大海を軽々と飛び越えて、アフリカの大地で自分自身の人生を煌々と燃やし続ける。そして70歳を過ぎた今も、そのバイタリティが発する強烈な輝きを失うことなく、日々挑戦を続けられている。
それが本書の著者、佐藤芳之さん。
もう本当に魅力的すぎる。ラグビー部というだけでも、ぐっと来てしまうのに。

一応書いておくと、本書は経営の指南書ではない。
日本とは文化的・社会的背景が全く異なるケニアの地で、現地人のモチベーションを巧みに引き出しながら、「アフリカ人の自立のため」の工場経営を常に意識していたという佐藤さんの経営手法は、当然ながら非常に興味深い。アフリカビジネスが注目されている今、その経営から学ぶべき点は多い。でも、やっぱり経営の本じゃない。
本書は、ヒトがメインの本だ。
「ヒトがする経営」ではなくて、「経営するヒト」の本。この順序は大切だ。
だからこそ、本書は圧倒的に面白い。佐藤さんの人間的な魅力が詰まっていて、その器の大きさは、読む側の心を強く揺すぶってくれる。

本書と並んで平積みされている多くのビジネス書は、昨今のトレンドもあって、非常に「小さなこと」を殊更クローズアップしているものが多い。「ダンドリ力」「気配り力」「質問力」といった調子で、「大切だけれど、小手先でしかないもの」が蔓延している。でも結局のところ、そんなことではないのだというのが、本書を読めばよく分かる。
最後は「器」、これに尽きるなあと。

ページを繰るたびに、素晴らしい言葉が随所に転がっている。
是非読んでみてほしい。
チマチマしたくない人に。そして、あまねく全てのラガーマンに。

最後に、本書の末尾に添えられたジェームス・ディーンの言葉を書き留めて。
"Dream as if you'll live forever. Live as if you'll die today."