Monday, August 13, 2012

心を開く建築


SHIGERU BAN




  • 作者: 坂 茂、undefined、坂 茂のAmazon著者ページを見る、検索結果、著者セントラルはこちら

  • 出版社: ファイドン (2005/06)

  • 発売日: 2005/06


父はずっと自宅を事務所に建築設計士をしていた。
約2年前に病気をして、右半身麻痺と言語障害が残ってしまい、今は車椅子。寂しいけれど、母が廃業の手続きをすることになった。
言葉を失った父は今、考えていることを表現できない。
ただ、何かを考えている。目がそう語っているからね。

帰省する時に、何か気持ちが開くものを持っていこうと思った。
モノに対する執着心が全くない人なので、ちょっと悩んだのだけれど、最終的に選んだのが本書だ。坂茂。紙や竹、布といった有機的な素材を用いた建築を数多く生み出してきた日本を代表する建築家の作品集だ。

そうしたら、驚くほどの反応があった。
分厚い作品集の頁を、多少ぎこちない左手で1枚ずつ繰って、本当に食い入るように坂茂の建築を見つめていた。その姿を見ていて、父の好奇心が全くもって枯れていないということが、はっきりと分かった。

坂茂の建築は、俺も好きだ。自分が好きだから選んだということもある。
建築を生業とした親に育てられながら、建築を表現する言葉を持っていないことが本当に情けないけれど、坂茂の建築は、現代的でありながら、冷たくない感じがする。クールすぎないというのかな。寂しくない。包装された状態で、中身を確認せずに買った1冊だけれど、素晴らしい内容で本当に嬉しかった。

実は、横浜の自宅にも置いておきたくなったくらいです。