Friday, July 13, 2012

『三日月とクロワッサン』


三日月とクロワッサン




  • 作者: 須藤 靖

  • 出版社: 毎日新聞社

  • 発売日: 2012/2/11


本日読了。
宇宙物理学者の須藤靖さんによるエッセイ集。
書店や図書館では科学図書のコーナーに収蔵されることも多いようだが、著者自身も書いている通り、全くもってジャンル選択ミスだ。平たく言ってしまえば、宇宙物理学者ゆえのウィットが存分に散りばめられた痛快エッセイといったところだ。

それにしても、まあ面白い。
本書を読んでみて何より思うのは、「どうでもいいことを、マジメに(笑)考え込んでみる」ことの愉しさだ。何かの目的のために、あるいは打算のために考えるのではなくて、ほんとにどうでもいいことを、とにかく考えてみる。これほど愉しいことはないよなあと、つくづく思ってしまう。
本書は、そんな話のオンパレードだ。幾つか例を挙げてみよう。「せんべい」と「おかき」の違いは何か。日本に滞在していたアメリカ人の特別研究員の見事な質問、「インターネットの接続速度が速くてサクサクと検索できた、とか使っている人がいますね。これは食べ物のサクサクと同じ意味ですか」(相当レベルが高い質問じゃないか。)人生の幸せを相対論的微積分方程式で表現できるか。クロワッサンとは三日月であり、三日月とは新月から三日目の月(向かって右側が輝いた状態)である以上、トルコの国旗に描かれた月(アルファベットの「C」の型)はデクロワッサンではないか。
そういうどうでもいいことをユーモラスかつマジメに考えて、かつ出版してしまう宇宙物理学者(東大大学院教授)。個人的には、とても好きな感じだったりする。

ちなみに俺も、ちょっと似たような趣味がある。どうでもいいことを考えて遊ぶクセというのかな。「もし人差し指の先で匂いを嗅ぐことができたならば、それは定義上、鼻なのか」とかね。まあ、さほど突き詰めないけど。

読んでいてとてもラクでありながら、とても知性的な営みにみちた1冊。
なかなかオススメです。