遅くなってしまったけれど、昨日は小飼弾(dankogai)氏の講演に参加してきた。
19時から渋谷で開催されたちょうど2時間のセミナー。当初予定されていたテーマ(表題)は「ビジネス、エンジニアリングを成功に導く『新しい仕組みづくり』」というものだったのだけれど、当日になって蓋を開けてみると「働いたら負けな理由」になっていた。ちなみにプレゼンテーションは、当日発売されたばかりの新型iPadで。
講演が1時間。Q&Aが1時間。インタラクティブでなかなか楽しかった。
そして思ったこと。小飼弾さんという人は、講演よりも「問答」の方が面白いね。
あれは、かなり凄いです。常人には出来ない切り返しを連投してきて。
印象的だった言葉を、幾つか書き残しておきます。
(オンとオフの切り替えについて問われて)
「自分の胸に、本当に手を当ててください。人間にオフはありません。」
「ルールを破る自由を持っているのが、アマチュア。
自分でルールを作れるが、それを破る自由を持たないのが、プロ。」
(Java/C言語を学んで、これから初めてIT業界へ就職する人へ)
「あなたは『未経験の業界』だと言うけれど、その業界で起こり得る全てのことに対して未経験という訳じゃない。『未知の体験』という体験は、既にしている。」
(ITサービスのマネタイズに関する考慮点を問われて)
「マネタイズ自体が目的であるならば、簡単だ。農業をすればいい。誰もがマネタイズしている。『モノに近い方が、マネタイズしやすい』ということは、知っておいた方がいい。そこにはヒントがあるはずだから。」
「今は『何かをしなければ』という視点しかない。『何をさせないか』という視点もあって良かったのではないか。それがないのは、哀しい。」
「エンジニアの価値は、何かを付け加えることではなくて、ムダな何かを完全に削ぎ落とすことにある。でもそれは、ムダな雇用をも削ぎ落とすということだ。その意味で、現代のソフトウェア・エンジニアリングに携わる人間というのは、最も罪深い人間でもあることを自覚しなければならない。」
「何かの重要性、あるいは価値を捉えるために、そのモノを『抜いてみる』ということを考える。生物科学におけるノックアウトマウスのように。」
ちなみに俺は、1つの質問をした。(事前に送付していた質問が紹介された。)
「仕組み化すれば、生産性は一時的に高まるかもしれない。でもその時に、仕組みでしか動けない人間を量産してしまえば、『仕組み自体の高度化』ができない。一方で、仕組みを最も効率的に廻せるのは、仕組みを疑わない人間だったりする。こうした按配を、どのように取るのが理想的と考えていますか。」
そんな主旨で、事前のメールは書いたつもりだった。
その回答が、また素晴らしかった。
「仕組みと、仕組み化されないものとの按配は常に難しく、具体的なケースによって異なる。ただ1つ言えることは、『仕組みの寿命は日に日に短くなっている』ということだ。そのことは意識しておいた方がいい。」
勿論、ノートに書き落として帰ってきました。
また、「現代の経営者にコーディング・スキルは必要か」という参加者の質問に対して、こんな逆質問があった。
「スティーブ・ジョブスはコーダーだったと思いますか」って。
たまたま俺は、司会者に指名されてしまい、ちょっと考えてから発言した。
「例えば、iTune Storeによって個人に課金するという『仕掛け』をコードした、という意味で、コーダーだったのではないか」って。
それに対して、「いや、それはジョブスじゃないんですよね」と断ってからの、彼の回答がまた凄かった。
「ジョブスは、コーダーをコードしたんです。」