白井さゆり『ユーロ・リスク』(日経プレミアシリーズ)
本日読了。もう少しタイムリーな時期に読むべきだった。
昨年6月に刊行された本なので、多少古くなってしまったけれど、ユーロ圏の現状と課題について非常に分かりやすく整理されている。一読しておいて損はない1冊だ。
ユーロ圏を、高リスク国(ギリシャ・アイルランド・ポルトガル・スペイン)、中リスク国(イタリア・ベルギー等)、低リスク国(ドイツ・フランス・ルクセンブルク・オランダ・オーストリア・フィンランド)という3つのグループに分類し、それぞれの特徴を明らかにしていくのだけれど、例えば高リスクの4ヶ国でも、問題の構造は異なっている。巨額の財政赤字と政府発表データ(財政統計)の度重なる大幅修正で信用を失墜させたギリシャ。不動産バブル崩壊で銀行危機に陥ったアイルランド。GDP比でみた対外債務が110%を超えて、ユーロ圏最大であることに加えて、政治危機も重なったポルトガル。財政収支の悪化スピードが極めて速く、2007-2009の2年間でユーロ圏最大となる13%ものマイナスを記録したスペイン。こうして整理されると、一言で「ユーロ・リスク」といっても様々な背景が複合的に絡み合っていることが良く分かる。
ドイツとフランスの比較も面白い。低リスクに分類される6ヶ国でみても、ここ数年で経常収支が唯一マイナスとなっているのがフランスで、ドイツを中心としたその他5ヶ国はプラスだ。なるほど。初歩的なことだけれど、とても勉強になるね。
ちなみに本書の結論は、高リスク国/低リスク国の別を問わず、ユーロを崩壊させることにプラスのモチベーションを見出せる国家はない、ということだ。たとえギリシャに足を引っ張られたとしても、ドイツは足を洗えない。それがユーロだと。