Sunday, July 10, 2005

SPEED

金城一紀さんの最新作『SPEED』、読了。

金城さんのこれまでの作品は、すべて読んでいる。
最初に読んだのは、大学時代のチームメイトが薦めてくれた『GO』という作品。その頃はまだ社会人ラグビーでプレーを続けていたのだけれど、確かある日の練習終了後に、携帯にメールが入ったんだ。いますぐ買って帰れ、って。
いろんな意味で信頼しているやつの薦めだったから、その日の帰りに八千代台の書店で買って帰った。京成線の特急に乗って、頁を開いて読み始めて・・・

そしたら、抜群だったんだ。

『GO』はその後、窪塚洋介主演・宮藤官九郎脚本で映画化されて、話題になった。詳しくは憶えていないけれど、各種の映画賞を総ナメにしたはずなので、映画を観た人は多いかもしれない。でもさ、もし原作を読んでいないのなら、明日の帰りにでも本屋に寄って、手に取ってみてほしい。瑞々しくて、スピード感に溢れていて、鋭利な刃のようにエッジが効いていて、そしてストレートに心に訴かけてきて、とにかく素晴らしい作品なので。

そんな訳で、『GO』の読了後は、既に発表されている金城さんの作品をとにかく読みふけった。とは言っても、金城さんの作品は、まだ数自体が多くないんだ。『対話篇』を読んで、『レヴォリューションNo.3』を読んで、『フライ,ダディ,フライ』を読んだら、それで終わりだからね。

『レヴォリューションNo.3』と『フライ,ダディ,フライ』は、連作になっている。5人の高校生を中心としたチーム「ゾンビーズ」が、誰かが決めた世界を飛び出して、自分たちの世界を創るために暴れまわる。ひとことで言うと、そんな物語だ。

『SPEED』は、このゾンビーズ・シリーズの続編。ヒロシを失って4人となったゾンビーズと、偶然出会ったひとり女子高生とが織り成す、新たな跳躍の物語。「跳躍」というのは、誰かが決めた世界からの跳躍、ということだけど。

やっぱり、瑞々しさに溢れている。作品全体としての完成度は『フライ,ダディ,フライ』に劣ると思うけれど、十分に魅力的な作品。ゾンビーズの(特に舜臣の)言葉は、鋭くて、妥協がなくて、でもいつだって優しさが忍び込ませてあって、とても格好良いね。

これから読む後輩がいるので、細かなことは書かない。
ひとつだけ書くなら、ゾンビーズの親友で情報屋のアギーが運転する車の中で、山下が泣き出すシーン。アギーは、ゾンビーズと岡本さん(主人公の女子高生ね)を乗せて、車を運転していて、音楽をかけようとカーステレオに手を延ばすんだ。エレキギターのイントロが流れ出す。するとアギーは、やべっ、と呟いて、すぐに曲を変えようとパネルを操作するんだ。でも山下は、もう堪えられずに泣き出してしまう。
その曲は、ヒロシの大好きな曲だったんだ。ヒロシっていうのは、病気で死んでしまったゾンビーズの親友で、『レヴォリューションNo.3』において、彼らはヒロシの為に、女子高の屋上から花火を上げるんだ。

このシーンが、おれは最高に好きだよ。涙なくしては読めない。
ヒロシってやつは、いいやつだったんだ。『SPEED』においても、ヒロシのことはたびたび語られるけれど、それほどゾンビーズにとって大切な存在なんだ。
だからさ、もしゾンビース・シリーズを読んだことがないのであれば、まずは『レヴォリューションNo.3』を読んでみてほしい。この作品こそが、ゾンビーズの原点だから。(『フライ,ダディ,フライ』には敢えて触れないけれど、『レヴォリューションNo.3』を読み終えたのに『フライ,ダディ,フライ』を手に取らないなんてことは、あり得ないよね。)

そしたらきっと、このシーンで涙すると思うよ。