Sunday, July 24, 2005

意図を持つ

タマリバクラブの活動の一環として、横須賀高校ラグビー教室に参加してきた。

横須賀高校は、名門の桐蔭学園を筆頭とした激戦区の神奈川県で、花園出場を目指して頑張っている公立高校。選手のみんなは、タマリバと練習できるのを楽しみにしてくれていたみたい。クラブチームとはいえ、タマリバにはかなりの実績を持つ選手も少なくないので、彼らにとっても刺激になったと思う。タマリバのメンバーにとっても、これから先何年も活躍していく選手達が、こうして期待してくれるというのは、やっぱり嬉しいことだよね。
そんな訳で、予定時間を大幅にオーバーして、3時間近く、みっちり練習してきた。

練習全体をコーディネートしてくれたのは、SHの吾朗さん。
最近タマリバでもよく話すようになった先輩のひとりで、ラグビーに対してとにかく真摯に向かう姿勢にいつも刺激を受けている。今日の練習でも、進め方やコーチングのポイントが事前にかなり練られていて、すごく濃密な内容になっていた。日常生活の中から自分の時間を割いて、事前にこれだけ準備しておくのは、実際にはかなり大変なことだと思うんだ。たった一度の練習を有意義なものにする為に、それなりの時間を費やして準備をしてくれたことは、吾朗さんが練習中に右手に抱えていたメモを見れば、誰にだって分かるはずだ。そういうことのひとつひとつが、選手達からの信頼に繋がっていくんだろうね。高校生は、きっと嬉しかったと思います。

ラグビーを教えるのは、とても難しいよね。
ラグビーのプレーにはいろんな考え方があって、ひとつの正解は存在しない。メンバーの特徴や個性、相手チームのスタイル、現時点での選手のスキルレベルや経験、その時のチーム状態やモチベーション。そういった諸々の要素によって、教えられるプレーや教え方、伝えたいキーメッセージが変わってくる。そういう諸条件を見極めて、限られた時間の中で、ポイントを絞ってメッセージしないと、教える側の自己満足で終わってしまう。何をいつ、どのように伝えるか。それも押し着せるのではなくて、選手自身が考えて、何かに気づくためのきっかけを準備するように仕向けていく為に、どういう方法論を取るか。そこまで考えて、判断しながら進めていかなければならない。そういう意味では、コーチングというのは極めて知的な作業だと思う。

そして、だからこそコーチングは、逆に自分が学ぶきっかけにもなる。
教えるために、考える。考えてみると、それまで明確に意図せずにしていたプレーの意味に、改めて気づいたりもする。意図を持って、考えてやっているプレーでなければ、説明できないからね。

意図を持ってプレーすることには、すごく大切な意味がある。つまりね、「意図を持っている」ということは「自分の意図を他人に伝えられる」ということでもあるんだ。するとそこで、お互いの意図の確認という作業が生まれる。これが「コミュニケーション」だよね。ラグビーは15人でするスポーツなので、グラウンドには15の意図がある。でも、チームの目的はたったひとつ、「ゲームに勝つ」ということ。だから、15の意図を、1つの「チームの意図」に纏め上げていくことが必要になる。コミュニケーションというのは、その為に欠かすことの出来ない最大の要素だよね。
意図のないところに、コミュニケーションはないと思うんだ。

今日の練習に参加したタマリバのメンバーの中には、大学生も数名いたのだけれど、今日のコーチングの経験は、彼らの刺激にもなったみたい。「自分も初めて聞くようなことがたくさんあった」って。それだけじゃない。高校生から飛んでくるシンプルで難しい質問。どうやるんですか、と質問されても上手く説明できないプレー。そういう諸々に向かうことで、きっと自分達の方が考えちゃったと思う。
おれ自身も同じで、高校生に聞かれた幾つかの質問には、どきっとしてしまった。10年以上もプレーを続けているのに、改めて質問されると戸惑ってしまうことがたくさんあるのだから、ラグビーは本当に難しくて、奥が深くて、そしてやっぱりおもしろいスポーツだと思う。いい勉強になりました。

ちなみに。
自分達の練習として最後にやったタッチフットは、最悪の出来だった。両チームともミスばかりで、集中力も低くて。せっかくオフにこうして時間を割いて集まっているのだから、もっと練習の質を高めないと勿体ないよね。確かに高校生も数名混じっていたし、全体としてのレベルは高くなかったけれど、そういう問題じゃないんだ。
自分のプレーにもっと集中して、自分からやればいいんだから。