寺山修司の評論集『書を捨てよ、町へ出よう』、読了。
以前からずっと気になっていた作品。
これまでなぜか、手に取ることがなかったけれど、書店の棚を眺めていると、いつも必ず目にとまる。そして、その度に「まだだな」と思い、別の文庫に手を伸ばす。そういうことを、これまで何度も繰り返してきた。
本には、不思議と「出会うタイミング」というやつがあると思う。今になって、なぜか読んでみようと思ったのも、どこか縁のようなものかもしれない。きっと今までは、作品を受け入れる準備ってやつが、まだおれ自身の中に出来ていなかったのだろうと思ったりもする。
いざ読み終えてみて。
きっと学生の頃に読んでいたら、まったく違う感想を抱いたと思う。
今のおれは、寺山修司の基本的な姿勢、あるいはポリシーといったものを、とても正直で、格好良いと思う。詩人寺山修司の言葉は、表情豊かで、時に荒々しくもあり、時に穏やかでもある。鋭利でもあり、また朴訥でもある。でも、その言葉の根底におれが感じるものは、「真っ直ぐさ」のようなものなんだ。
「真っ直ぐ」というのは、寺山修司であることに「真っ直ぐ」であるという感じかな。
そういう真っ直ぐさを、おれはとても格好良いと思うし、そこにこそ寺山修司という人間の魅力を感じてしまう。それはきっと、「真っ直ぐ」ということの意味について、学生時代よりもちょっとだけ考えられるようになったからでもあると思う。
自分であることに「真っ直ぐ」である人間は、どうしたって魅力的だよ。
結果としての行動や、生き様や、成功や挫折や、そういうものとは関係なく、ただそれだけで十分に魅力的だと思う。
ちなみに、作品の中で、ファイティング原田とアマ王者の桜井の対戦を想像して語ったところがあるんだ。桜井というボクサーのことはまったく知らなかったし、ファイティング原田にしても、現役時代の試合を見た訳でもないので、お互いの当時の実力など、正直言って分かるはずがない。でも、実現することのなかったこの対戦を想像する中で、寺山修司の語った結末がとても良いね。あくまで想像を語ったものだけれど、その最後の言葉は紛れもなく真実だと思う。
ここだけでも、本屋で立ち読みする価値はあると思うよ。