ひさしぶりに、絵を観てきた。
六本木ヒルズの森美術館で開催されているフィリップス・コレクション展。
もともとおれは、それほど美術館が好きなわけではなかった。
両親ともに絵を観ることを趣味にしているし、親父は描くのも上手い。家にはいくつかの画集があって、比較的幼い頃から絵に触れる機会は少なくなかったと思うのだけれど、正直に言って、自分から絵を観に行こうと思うことはほとんどなかった。今となっては、最初のきっかけは思い出せないけれど、おそらくミレーの『落ち穂拾い』じゃないかと思う。『落ち穂拾い』は、横長のカンバスに描かれた「秋」が有名だけれど、実はもうひとつ、縦長のカンバスに描かれた「夏」があるんだ。高校を卒業する直前の1996年3月に、山梨県立美術館が購入して、おれはその絵を観るために、大学入試の合格発表が行われる前に、山梨に行った。結局その絵は公開前で観られなかったし、大学入試は見事に滑っていたけれど。
長くなったけれど、とにかくその頃から、年に数回は、主にひとりで絵を観に行くようになった。(数回といっても、片手で十分数えられる程度だけれど。)東京で一人暮らしを始めた頃で、両親は「せっかく都会にいるのだから、いい絵をどんどん見たらいい」と言っていたのだけれど、ちょっとだけ、そうだな、って思うようになった。そんなおれが、絵に対する興味を少しずつ強めていったのは、ほとんどうちのパートナーの影響だよね。
それで、フィリップス・コレクション展。
結構な数の作品が展示されていて、かつ蒼々たる画家の作品が並んでいた。
印象に残っているのは、クロード・モネの『ヴェトゥイユへの道』という作品。黄色を中心とした淡い色づかいで描かれた一本の道。光の優しさが心地よく、美しく、そしてどこか暖かい。
それから、「踊り子」を描いたドガの作品。ドガは「踊り子」をモチーフにした幾つもの作品を残していることで有名だけれど、実際に観るのは初めてだった。ふたりの踊り子が稽古する姿を描いたものだったのだけれど、うちのパートナーは「完璧な構図だ」と、その素晴らしさに感動していたね。
他にもルノワール、デ・キリコ、セザンヌ、ゴッホといった画家の作品がずらりと並んでいて、見応えのある展覧会。ちょっとうまく纏まりすぎているきらいがないでもないけれど、十分に魅力的な作品が数多く並ぶ、とても質の高いコレクションだと思う。
ちなみに。
展示のいちばん最後の方に並んだ3つのピカソの作品。その圧倒的な魅力。
ピカソは天才だね。