Tuesday, July 19, 2005

ミルフィーユ

今年4回目の渋谷ユーロスペースで、久しぶりの映画。
内田けんじ監督作品「運命じゃない人」
http://www.pia.co.jp/pff/unmei/index.html

最近彼女にふられてしまった宮田。
宮田の昔からの親友で、探偵事務所を構える神田。
他に好きな人が出来たと言って、宮田を捨てていったあゆみ。
昨日まで婚約していたのに、突然ひとりぼっちになってしまった真紀。
台所事情は芳しくなくとも、メンツは守らなければならないヤクザの浅井。
便利屋の山ちゃん。
それぞれの思い、それぞれの考えや目論見、そういったものの間に生じたほんのちょっとした「ずれ」が複雑に絡み合って、それぞれの生活に思わぬ展開を引き起こしていく。スクリーンの外側の視点からみれば、すべてが1本の糸として繋がっていくのだけれど、スクリーンの中の登場人物には、それぞれ自分自身にしか見えない糸があって、そのそれぞれが、他とは違う色をしている。
その色の配分が、軽妙で心地良い作品だね。

うちのパートナーは、「ミルフィーユのような映画だ」と言ってた。
ミルフィーユのように幾重にも層が折り重なっていて、立体的な作品だって。
すぐ食べ物に例えてしまうんだけど、悪くない表現かなとも思う。

すごく低予算で作られた映画だというけれど、非常によく練られていて、人間味のある作品に仕上がっていると思う。主人公の宮田ってやつが、とにかく優しい男なのだけれど、ミルフィーユの層の中にあって、その優しさは馬鹿みたいでもあり、ほっとしたりもして、結構悪くない感じだ。
それから、単純に笑える作品でもある。ところどころに織り込まれたユーモアは、かなり笑えるものが多いね。コメディとしても、センスが良いと思う。便利屋山ちゃんが最初に登場するシーンなんか、隣の人は5分近くも笑い続けてたからね。

そんな訳で、派手ではないけれど、とても丁寧に作られた良い作品だった。
ユーロスペースは、会員になると全ての上映作品が1,000円で観られるのだけれど、良質な作品も多いし、絶対に損はしないので、会員登録必須だと思います。