ひょんなきっかけから、今まで気に留まることのなかったところに目を向けてみる。
先日、渋谷シネ・ラ・セットで映画「PEEP "TV" SHOW」を観た時に、1枚のチラシが目にとまり、持って帰った。
映画『永遠のハバナ』のブローシャー。
”ゲバラもジョン・レノンも、もういない。でも、私たちの人生は、ここにある。"
この言葉を目にしたら、手に取るでしょ。この映画は、近く見に行こうと思ってます。
http://www.action-inc.co.jp/suitehabana/
家に帰って、上映してる映画館を調べたところ、同じく渋谷のユーロスペースで上映されていることを知ったんだけど、実はそのユーロスペースのHPで、『永遠のハバナ』とは別に、気になる映画をひとつ見つけてしまったんだ。
それが、"Rosas in Films"という作品群。
Rosasというのは、芸術監督であり振付家でもあるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルを中心として、ベルギーを拠点に活動を続けるコンテンポラリー・ダンスのリーディング・カンパニーらしい。この映画のことを知るまで、おれはその存在すら知らなかった。ローザスは舞台での活動のみでなく、いくつもの映像作品を発表しているそうで、"Rosas in Films"というのは、このローザスの映像作品群7作品を一挙に公開する試みだったんだ。
そして、その中のひとつ"Counter Phrases"という作品を、今日観てきた、というわけ。ついこの間まで、まさか自分がコンテンポラリー・ダンスを観に行くことになるとは思ってなかったよ。
ただ、正確に言うと、「コンテンポラリー・ダンス」という世界に惹かれてこの作品が目に留まった、というわけじゃない。この作品を観たいと思った本当の理由は、実はダンスではなくて、音楽。この作品は、10人の作曲家による10曲のそれぞれにダンスが組み合わされるんだけど、その10人の中にSteve Reichがいたことが、最大のきっかけだった。
Steve Reichは、おれが最も好きな音楽家のひとりだからね。
"Counter Phrases"を観て思ったのは、おれにはダンスを評価する基準がない、ということ。別に評価しなくても、単純に楽しめればそれでよいのだろうけど、「ローザス」というものの価値は、正直言って、今のおれにはつかめなかった。映像作品としてのおもしろさは随所にみられたけどね。
ただ、Reichの曲に関して言うなら、掛け値なしによかった。それ以外の曲がそれほどだったこともあるけれど、8番目の作品としてReichの曲が始まった瞬間に、作品の緊張感ががらりと変わった。それまでのりこの隣で寝ていたお客さんが、このタイミングで起きたそうだから、あながちおれだけの感覚ではないんじゃないかと思う。"Dance Pattern"という曲。その後すぐにHMVで探したけれど、残念ながら見つからなかったよ。
それから、ひとつ思ったことがある。
この作品のなかには"in Silence"という、曲がなくてダンスのみのシーンが2つあるんだけど、そこがなかなか印象的で。なにかというと、ダンスという身体表現が際立つ気がしたんだ。例えば、ブレスの音がくっきりと残る。手足を振った時の、空気の切れる音や、地面を蹴る音、そういうものが浮き上がってくる。身体でつくられた音、という感じがきちんとして、「身体」ということのちからをいちばん感じたシーンだったね。
というわけで、近いうちに、もういちどユーロスペースに足を運ぼうと思ってます。
『永遠のハバナ』は、はずせない。