お客様先へと向かうバスの中でのこと。
バスには4人掛けのボックスシートがあるのだけれど、おれの向かいに2人の小学生の女の子が座ってたんだ。たぶん1年生か2年生くらいじゃないかな。ふたりは仲良しらしく、楽しそうにおしゃべりをしていたのだけれど、それがおもしろくて。
「ねぇ、世界でいちばん嫌いなのってなーに?」
「んー、ないなぁー。・・・キムチ?」
「えー、ちがうよー。『もの』じゃなくて、『こと』だよ」
「『こと』かぁ・・・」
「あたしはね、宿題」
「えー、なんで?」
「だってね、勉強はね、学校でやってね、宿題はね、家でやればいいんだけどね、時間のムダだしね・・・」
「でもー、例えばねー、クロスワードみたいなのがあってね、それでね、数字を埋めていってね、計算とかしてね、それでね、ああやってこうやってね、そんなのだったら、おもしろいでしょ」
「ちがうよー、それは『遊び』じゃん」
子供って、おもしろいね。
まず、世界でいちばん嫌いなのが「キムチ」なんだからさ。今となっては、小学生の頃の自分がなにを考えていたかなんて、全然思い出せないけれど、お化けとか、ゴリラとかさ、もっとあるような気がするよね。
これだけでも十分に微笑ましい話なのだけれど、その後のやりとりにはちょっと感心してしまった。「それは『遊び』じゃん」っていう、そのことばがとても良かったんだよね。
だって、その通りだよ。遊びだと思う。これは、ラグビー部のメンバーが「練習」という名の遊びをしているのと同じことだよね。こうやってやる宿題は、きっと身になるんじゃないかと思う。
この女の子は、漢字ドリルが嫌いなんだって。きっと、ただの作業だとしか思えないんだろうね。そういえば、漢字ドリルはおれも大嫌いで、実はほとんどやらなかった。おれは小さい頃、新聞のスポーツ欄で漢字を覚えたんだ。小学校の低学年の頃から、スポーツ欄だけは隈なく読んでいたので、漢字なんて知らないうちに覚えていたよ。
遊びにしてしまう、というのは、かなり本質を射抜いているよね。
そんな子供の発想に、ちょっと感動です。
キムチ、食べられるようになるといいね。